大志を抱く若手作家たちの芸術 「第2回 未完の大器アンビシャス展」開催

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JR北広島駅からバスで5分。エスコンフィールドの奥にある小高い丘の上には、社会福祉法人北ひろしま福祉会の運営するレストランがある。その名も「にじのかかるところ」。

restaurant&bakery cafe 「にじのかかるところ」

店内には大きな窓から日差しが差し込む暖かい空間が広がり、多くの人々が席について談笑している。人々の視線の先には、壁に掛かる数々の個性的な絵。道内の若手作家たちの絵画作品である。

「にじのかかるところ」の内部

3月5日、この日行われていたのは「未完の大器 アンビシャス展」。食とアートが融合したレストラン「にじのかかるところ」と、そこで展覧会を主催した北大美術部黒百合会の思いに迫った。

大志を抱く若手作家たち

「未完の大器」とは、道内の若手作家を中心に開催されている美術展である。一般社団法人アーティスト創生プランナー協会の中野聖さんが運営し、定期的に様々なアトリエで開催されている。「アンビシャス展」は「未完の大器」のなかでも大規模なもので、今回で2回目の開催。ビッグタイトルを獲得する実力派から、絵を描き始めた駆け出し作家まで、多くの若手作家が出品する。

アンビシャス展のアンビシャスとはもちろん、言わずと知れたクラーク氏の名言「Boys be ambitious」に由来する。大志を抱いた次世代の美術家たちが、新たなステージをめざし作品を送り出す。そんなコンセプトを掲げるアンビシャス展は、まさにその名言を残した地とされる北広島で開催される

食とアートが融合したレストラン

「にじのかかるところ」とは、北ひろしま福祉会が運営する、3年前に設立された障がい者支援施設で、地産地消で地域に根ざしたレストラン・ベーカリーカフェ。エスコンフィールド近くの飲食店としても注目を浴び、ランチタイムを中心に多くの人で賑わう。

にじのかかるところが掲げるコンセプトが、「食とアートの融合」。レストランの店内がアトリエとしても機能しており、様々な展示会が行われているのだ。新たな展示会が開催される度に店に訪れ、食事を楽しむ常連客もいるという。

アンビシャス展幹事で、北大黒百合会所属の田中理子さん(医学部・2年)は、にじのかかるところの食事を楽しみに来た客や、野球観戦の際に立ち寄った客など、今まで若手作家たちの作品を目にしたことがなかった多くの人に作品を見てもらう機会となると考えている。「新しい層のファンができるかも」と目を輝かせた。

「お気に入り」が見つかる展示会を目指して 

田中さんは、展示会への参加経験はあるものの、幹事を務めるのは初めて。会期直前には「計画や展示の配置は大丈夫かな」と不安の色をのぞかせていたものの、「老若男女たくさんの人に来て、楽しんでもらいたい」と意気込む。「バラエティーに富んだ作品が多くて、人によって全く違うのが面白い。是非来てもらった一人ひとりにお気に入りの作品を見つけてほしい」と語った。

そんな田中さん自身が今回出品した作品は、「氷解」。柔らかで色とりどりな氷が、コップの中でとけてゆく様を透明水彩絵の具で描いている。雪解けを連想させる氷と明るいタッチが、一足早く春の訪れを感じさせる、そんな作品だ。

「氷解」田中さん作

美しい色の重なりは、緻密に計算されているように見えるが、本人は「色に関しては、完全にぶっつけ本番」だと語る。プロジェクトを運営する中野さんは、「とても上手な絵。すぐに売れてしまいそう」と太鼓判を押し、実際に会期が始まると間もなく売約された。

 黒百合会所属の北大生は、他にも様々な表現の作品を出品している。

 今回、大規模な展示会への参加が初めてだという本多由夢さん(総合教育部1年)が出品したのは、アクリル絵の具作品の「紅葉」。

「紅葉」本多さん作

紅葉に見立てられた黄や赤の魚たちが、自身の部屋の中に漂う情景を表現している。水族館が好きだという本多さんが、好きなものが家の中にあったら良いなとの思いで描いたこの作品。中野さんは本多さんについて、「現実と非現実の交わりをすごく上手に表現する作家。ファンタジーな世界観が見ていて楽しい」と評し、初の大規模な展示会でファンを獲得してほしいと激励した。

 展示されている作品自体も販売されているが、作家のグッズの販売もある。

壁に展示されている様々な作品と、手前の机で販売されている絵画のポストカード

田中さんが実家の犬をデザインしたという愛らしいデザインのステッカー

 作品を購入するのはハードルが高いという人も、お気に入りの作家のデザインを手軽に購入して持ち帰ることが出来る。田中さんは、絵画の鑑賞だけでなくグッズ購入やレストランでの食事など、それぞれに合った様々な楽しみ方ができる展示会になっていると語った。

 温かい雰囲気に包まれたにじのかかるところでは、時間がゆっくりと流れていくような感覚に陥る。ぜひ読者の皆様も、ランチや軽食を食べながら、才気溢れる若手作家たちの絵画を眺める優雅な時間を過ごしてみてはいかがだろうか。

※「未完の大器 アンビシャス展」は3月29日まで開催。

(取材・撮影・執筆:赤松)