中庭を囲み、つながる輪 保健学科・中庭プロジェクト
地域共生社会のモデルを
和やかな雰囲気の中で行われた今回のカレー作りだが、中庭プロジェクトは、ただ楽しく地域住民との交流を深めるだけのイベントではない。「中庭づくりを題材に、『地域共生社会』のモデルを実践し、提示したい」と中庭プロジェクトのメンバーは口を揃えて話す。
中庭プロジェクトは、広報・中庭づくり・研究の3部門からなる。広報部門・中庭づくり部門には、学生も参画することが大きな特徴だ。保健学科の棟内では、参加学生の意見を活動に反映するため、目安箱の設置も行っている。シンボルキャラクターの作成など、すでに採用された学生のアイデアもあるという。
中庭プロジェクトの発端
中庭プロジェクトがアイデアとして始まったのは、ちょうど1年前。雑草が生い茂り荒れ放題だった保健学科の中庭を舞台に、障がい者や高齢者との交流の場を設けたい。地域との輪を広げることができないかと、矢野教授が考えたのが始まりだった。
活動の初回は、今年4月、荒れ放題の中庭を整備するところから始まった。初回はほとんど、教職員と学生のみの参加だったが、回を経るごとに、地域住民からの認知度も高まった。地域住民・学生・教職員の間に、仲間意識やつながりが生まれている。今回のイベントでは、インドカレーの調理や、質問コーナーでの交流によって「インドのイメージが変わった」という声もあり、互いの理解を深めるきっかけにもなったのではないかという声も聞かれた。
中庭プロジェクトではひとつのサークルのように、「地域の人も教員も職員も学生も、優劣はなくフラットな関係」だと矢野教授は語る。「高齢者の方にはたくさんの経験値があるので、それをぜひ教えてもらいたい」、そして学生には「医療の当事者である、地域で暮らす高齢者の方々と、実習の前に触れ合ってもらいたい」。そうした関わりの中で、学生個々のコミュニケーション能力も上がる、と将来の医療人を育てる保健学科としての視点からも、利点を述べてくれた。
中庭プロジェクト担当の境信哉博士研究員によると、中庭プロジェクトが目指しているのは、高齢者・若者・外国人・障がいをもつ人など、様々な人が住む地域において「分け隔てなく、お互いに助け合って生きていける社会」を作ること。北大から始まり、「このようなコミュニティが全国に広がっていくことを望んでいます」と話してくれた。
取材の最後に、矢野教授が「これからの社会は、研究者だけでは考えられない。地域に住む、当事者の方々と一緒にどうしたらいいか考えて、みんなで解決できるようなことを生み出したり考えたり。みんなが中庭をどういう風に作りあげていこうかっていうのを、1年かけて考えていきたい」と、今後への希望を話してくれた。
中庭を中心に、人々の輪が広がっていく。多くの可能性を秘めた中庭プロジェクトの活動は、まだまだ続く。
なお、中庭プロジェクトの情報は以下から。
https://www.hs.hokudai.ac.jp/nakaniwa
(取材・執筆・撮影:品村)