中庭を囲み、つながる輪 保健学科・中庭プロジェクト
保健学科の茶色い建物に囲まれた空間が、憩いの場となっている。今年度4月から保健学科により始動した「中庭プロジェクト」。10月19日に行われた、5回目となるイベントを取材した。
中庭プロジェクトとは、北海道大学「ダイバーシティ&インクルージョン推進宣言」に基づいたプロジェクト。中庭づくりを題材に、北大の教職員・学生、障がい者や地域の高齢者との活動を不定期で行っている。記者が取材したのは、19日のカレー作り。SNS上で参加学生の募集が行われていた。
いつもの講義室で、地域住民とカレー作り
イベント当日、天気はあいにくの雨。本来は中庭での野菜の収穫も行う予定だったが、急遽カレーの調理のみのプログラムとなった。記者が保健学科の建物に入ると、中庭で事前に収穫された食材や鍋、包丁やカセットコンロが並んでいる。調理室となるのは、普段は授業が行われている講義室だ。
集まっていたのは、学生が十数人、地域住民の高齢者が20人ほど。最初に、作り方、注意事項などの説明を受ける。この日調理を指導するのは、インド出身のDivyavani Gowda助教。テーブルごとに分かれ、さっそくカレー作りが始まった。
地域住民と学生が混ざりテーブルごとに分かれ、和気あいあいと野菜を刻んでいく。「夏休みはどこか行ったの?」「玉ねぎは目が痛いよね」「私インド行ったことあるのよ」「この包丁切れ味いいね」など、他愛もない会話をしながら順調に調理が進む。
具材を煮込む待ち時間の間には、Gowda助教への質問コーナーや、保健科学研究院の稲垣侑士助教と、澤村大輔教授による健康のための体操の紹介が行われた。初対面でも、学生と地域住民がともに体を動かす中で笑顔が溢れた。
煮詰めた野菜にスパイスなどの調味料を入れて完成したカレーは、スパイスの刺激的な風味のなかに、バターと野菜の甘味が感じられる優しい味。トーストした香ばしい食パンとも相性抜群だ。
参加者も、「おいしい」「感激した」「野菜の味」「そんなに辛くない」と口々に感想を述べる。
最後に、保健科学研究院長で、プロジェクトリーダーの矢野理香教授が挨拶をし、参加者皆で片づけを行って、笑顔に包まれたイベントは幕を下ろした。
参加者の声
参加するのは3回目だと話す、北大近辺に在住の70代女性は、町内会のチラシを見て中庭プロジェクトを知ったという。集合住宅で生活するなかで、庭仕事をしたいと感じたことが参加のきっかけだった。「若い学生さんとお話できたり、保健学科でやっているから、健康のこと・体のことを聞けたりしてうれしい。ちょっとしたことからいろんな話が聞けるし、若い人から出てくる言葉は違う。年齢を越えて交流できる機会があるのはとても良い。大学としてももっとやってほしい」と話した。
中庭プロジェクトの初回から毎回顔を出しているという常連の70代男性は、「市民・学生・先生が一体となってプロジェクトを作っている良い企画。今後も続いてほしいという希望を持っている。中庭を中心に一体化してできることがあるのだと感銘を受けた。もっと多くの人に参加してほしい」という。
学生からも、地域住民との交流を喜ぶ声が聞かれた。看護学専攻2年の内海有愛(ゆうか)さんは、今回初めて中庭プロジェクトに参加したひとり。カレーを食べて、いろいろな人と話ができて楽しかったという。「これからもっと参加したい。地域の高齢者の方から子どもまで、幅広い人と関われたらもっと楽しそう」。
作業療法学専攻3年の島友佳さんは、以前のピザトーストづくりの企画以来、参加は2回目。「初対面の人と話す機会はなかなかないから、機会としていいと思う。この前のピザづくりも楽しかった。他にも、みんなで何か作れるような機会があれば」と、これからも参加したいという意欲を見せた。