北大生協 食堂メニュー 北大構成員含む非組合員に20%増価格設定へ 2025年3月から

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5日、北大生協はクラーク食堂などに「『非組合員割増価格』設定のお知らせ」を掲示し、札幌キャンパスでは2025年3月3日(函館キャンパスでは2月3日)から食堂のメニューに非組合員向けの20%の割増価格を設定すると発表した。生協にすでに加入している利用者は、これまで通りミールプランや電子マネーでの決済が可能なほか、組合員証(大学生協アプリの電子組合員証、または別途発行のカード式組合員証)を提示した上で現金やクレジットカードでの決済が利用できる。

非組合員の生協加入を促進 価格設定の効果と今後

組合員と非組合員(学生6~7%、教職員60~70%)の差別化を図ることで、生協加入の促進が期待される。北大新聞は今回の設定の経緯や影響について取材を行った。以前から生協に対して、組合員と非組合員の差別化の意見が届けられていた。これまで電子マネー利用による購入時の0.5%、書籍購入時の5.0%のポイント付与を行なってきたが、さらに差別化を進めるため設定の検討に至ったと回答した。

2025年3月からの割増価格設定後の決済方法(*生協アプリが利用できない組合員には別途カード式組合員証を発行する)

2020年11月から導入された、現行の10%増の「来訪者価格」は観光客など明らかに北大構成員でない利用者を対象としてきたが、今回の割増価格の設定により北大構成員の非組合員も対象となった形だ。

また、他大学の生協の状況を参考にしながら、20%の価格設定は、「原料高騰や周辺の飲食店の相場を考慮して決定」したとしている。

組合員の利用や決済の仕方について大きな変更はないが、レジで大学生協アプリや別途発行のカード式の組合員証が提示できない場合は、「全て非組合員価格として対応する予定」とのことだ。食堂利用時の大学生協アプリの必要性が高まる。

また、組合員が(非組合員の)家族や仕事での来客などを連れて生協を利用した際、組合員が一括で支払う場合は割増価格にはならず、これまで通り組合員価格となる。

中央食堂のメニュー。組合価格が表記されている。(撮影日:7日)

今後、食堂以外での割増価格の設定の予定については、「(想定として)内製弁当(ホット弁当)やコップパンも検討していますが、システムの関係もあり、当面は食堂メニューのみの設定を予定」しているとのことだ。

組合員との差別化強化へ 背景に生協の運営難 累積赤字1億4000万円超

組合員の出資によって運営されている北大生協は厳しい運営状況におかれている。2024年5月22日の通常総代会で、2023年度末までの当期未処分損失金(累積赤字)は1億4000万円超だと報告した。累積赤字については、2021年にコロナ禍の利用者の減少などにより2億7300万円を計上したが、その後、2022年度末には大学生協共済連解散による残余財産分配金(1 億 6246 万円)により、1億2496万円まで縮小。2023年度からは総代会で議決された「北大生協3ヵ年再生計画」に基づき、加入率の向上や利用者の増加による累積赤字の圧縮を目指している。しかし、前年から約1540万円の増加となり、利用者減少や材料高などによる採算性の厳しさを反映する形となった。

当期未処分損失金(累積赤字額)の推移(各年度の通常総代会報告書から記者作成)

組合員からの出資によって運営されている生協にとって北大構成員の生協加入はなくてはならない。学生の北大生協への加入率は92.6%(2022年度)と高水準でほとんどが加入している一方、教職員は40%以下にとどまる。

今回の「非組合員割増価格」の設定は「北大生協再生3か年計画」の「組合員加入を推進する取り組み」の一環として、常務理事会、定例理事会、教職員総代会議、教職員委員会で検討が重ねられた。

「フリーライダー問題」と学外者の利用

今回の北大生協の決定について、X(Twitter)上では北大に数多く訪れる観光客を背景に「北大生協が食堂の学外利用制限を始めたのでは」などの憶測が広がった。

生協食堂では11時から13時までの昼ピークの時間帯、学外者の利用を制限している。昼食時間帯の組合員の利用を優先するためだ。生協は、原則として「組合員以外の者にその事業を利用させることができない」(生協法第12条第3項)とされている。

北大生協も加盟する全国大学生活協同組合連合によると、例外として、「災害発生時の一時的な販売、大学による物品の購入、職務等で大学を訪問した方に売店や食堂をご利用いただくこと、オープンキャンパスなどで大学を訪問した方による利用、受験や学会等による来訪者・来訪予定者に交通機関の提供をすること等」は、法令上可能としている。北大生協も、原則として組合員以外に事業の利用をさせることはできないとした上で、「北海道大学は観光だけでなく、学会やオープンキャンパスなどで来訪される方が多くみられます。そのような方のために北大生協は北海道庁から員外利用許可をいただいております」としている。

ただ、「学生や教職員などの北大構成員ではなく、加入資格がない人」や「北大構成員として加入資格があるのに加入していない人」に対し、生協の側から利用を呼びかけたり認めたりすることは禁じられている。ただ、生協の側がこうした人を排除するというよりは、むしろ北大構成員がもれなく組合に加入するよう積極的に働きかける動機付けとして捉えられている。そのため、非加入者に対して利用が可能だと表明してはならない。これまで、非組合員の利用は「決して積極的に肯定されないが、(組合員証確認など)の積極的な防止措置を行っていないことにより、少なくとも組合員の利益を直接的に害しない範囲で見過ごされてきた」と言える。

しかし、北大構成員として加入する資格があるにも関わらず、加入せずに利用している学生や教職員がいる。同じ「フリーライダー(ただ乗り)」だとしても、そもそも加入することが不可能な外部の利用者のみに厳しい目を向けることは妥当ではないだろう。

今回の決定は、あくまで未加入の北大構成員に対して加入を促進するためのものである。取材に対しても「非組合員に販売をしない、というわけではございませんので来訪者を排除する、という考えも持っておりません」と回答している。「組合員の不利益にならず、利用の妨げにならないようにすることが肝要」だとも述べた。

そのため、「北大生協が観光客を食堂から追い出し始めた」という認識は誤解である。生協の食堂の利用には加入が前提。しかし、それは外部に対する排除性を担保するものではないことに注意が必要だ。

(取材・撮影・執筆:高野)