1400km離れた学生と奏でる 北大×京大ジョイントコンサート2024

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本番当日

演奏会当日を迎えた8月26日。北海道の晩夏にふさわしい、穏やかな晴天が大通の空に広がった。単独曲として、北大から2曲、京大からは1曲がそれぞれ演奏され、その後三つの合同曲が演奏される。

演奏会の始まりを飾るのは北大交響楽団による「喜歌劇『こうもり』序曲」。飛び跳ねるようなフレーズから始まり、オーボエのやわらかなメロディが忍び寄る。

北大演奏の2曲目「歌劇『イーゴリ公』より 韃靼人の娘たちの踊り・韃靼人の踊り」は、東方文化を演出したロシア国民楽派の代表曲。

「韃靼人の娘たちの踊り」序盤に現れるクラリネットの流麗な旋律は、ボロヴェツ族の若い娘たちの華やかな歌と踊りを彷彿とさせる。続く「韃靼人の踊り」では、前半、木管群による中低音のメロディーが雄大な中央アジアの草原を駆け抜ける騎馬民族の姿を思わせ、躍動感ある舞曲のリズムで全奏へと展開した。


 3曲目は、京大オケによる、ブルックナー作曲「交響曲第4番変ホ長調『ロマンティシェ』」。ホルンの奏でる、重厚ながらものびやかな主題が始まりを告げる。

「学生は手を出してはいけない」とも言われるような難易度の高い曲であり、4楽章で構成される長い曲だが、指揮棒へと結ばれた各奏者の視線は揺るぎない。

ヨーロッパの深い森の空気を後景に湛えつつ、難しい曲目であることを忘れさせる、洗練された演奏で観客を魅了した。


 各大学の単独曲を終えると、次に待つのは合同曲。「楽劇『ニュルンベルクのマイスタージンガー』より第1幕への前奏曲」では、京大オケの学生指揮者・池田智之さん(大学院理学研究科修士2年)が指揮を振る。劇作品全体のあらすじを示すこの曲では、二楽団の学生が一体となって、格調高いヴァーグナーの音楽を表現した。

合同曲2曲目は、川越守作曲「北海の幻想」。野村氏が客演指揮者として指揮台に立つ。序盤、弦部隊によって表現されるのは揺曳する日本海の波。眼前に広がる海の雄大さと漁の緊迫感が、弦・金管・木管・打楽器各部隊の音のぶつかり合う舞台上からホール全体へと波及する。川越先生の意志を継ぐ情景豊かな「北海の幻想」が、会場へと響いた。


 演奏会の終わりには客演指揮者・野村氏、京大オケ指揮者・池田さん、両大学コンマス・武田さんと亀田さんそれぞれに花束が贈呈され、会場はあたたかい雰囲気に包まれる。通常のオーケストラ演奏の2倍の人数で演奏される圧巻の「都ぞ弥生」で、演奏会は締めくくられた。

花束を受け取る野村氏(右)、池田さん(中央右)、亀田さん(中央左)、武田さん(左)(提供:北大オケ)

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