【受験特集:どんな道でも、道は道】第6回(3)誰のためかは自分で決める 2度目の受験と恩返し
釧路にずっといたいから
上京したい気持ちも確かにあった。それでも最後には、いつも家族に任されてきた自分の意思で、自らの生まれ育った釧路に戻ると覚悟を決めた。
工学部のままだった人生だったら、今頃院試の勉強か就活をしていたと思う、と宗石さん。大学院は東大だったかもしれないし、北大だったかもしれないし、留学をしていたかもしれない。修士課程を卒業して、東京で就職して、年2回くらい釧路に帰省する人生だった、と想像する。それでもやはり、帰省の回数は「年2回はだめ」だと言う。もっと帰りたいそうだ。
都会は「ちょっと嫌だ」から、東京で就職しても「忙しいとか、昇進とかあまり気にしたくない」から、「医師は技術の上達や経験の有無が大事だと思う」から、将来は「あまり目立ったことをせずに釧路でのんびり暮らしたい」から。紆余曲折を経て悩んだけれど、「これがいい」と自分の選択に胸を張った。志望校を決めるときもいろいろな選択肢があったけれど、「あまり他の選択肢がよかったとは思わない」。札幌に来たときから住んでいる現在の自宅も気に入っているという。「それもフロンティアで早く決まっていたから選べたし、いろいろつながっているんだなと思う」。
「選択は意外と間違ってないかもしれないし、間違っていても直せる」
最後に、今回の主人公・宗石さんの言葉で、この記事を締めくくりたいと思う。
まず、進路に悩む受験生に向けて。「高校生のときは、なにもわからないと思うから、とりあえず『これが好きかもな』で決めちゃっていいんじゃない。大学入ったら、自由だから、直し放題だから。それについては誰も何も言ってこないから。とりあえず、他の人が言ってることより自分のやりたいこと、そのときの自分が思う一番いい道筋を進んでいくのがいいかな」
そして、再選択に怯まないということ。「自分のやりたいこととか、進路についてじっくり考えるのが一番大事」「間違った選択をしたとしても、そのときは間違ったって思うかもしれないけど、意外と間違ってないかもしれないし、進路なんていくらでも直せる」。
最後に、「自分が恩返ししたい人がいたら、その人のためになるような選択を取ればいい」と、自らの選択を噛み締めた。
宗石さんの穏やかな表情が、自分の過去と未来越しに故郷と家族を見つめている。
(取材・執筆・撮影:品村 撮影:高野)