【受験特集:どんな道でも、道は道】第6回(3)誰のためかは自分で決める 2度目の受験と恩返し

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専門課程へ、充実の3年目


 宗石さんは、北大での「空白」の2年間を経て迎えた春に、ようやく、医学部医学科の専門課程に入る。そこで、学科の同期である記者とも出会うことになった。現在は医学部棟に通い基礎医学を学ぶ。過密とも言われる医学部のカリキュラムをどう感じているのか尋ねると、「教養もいいけど、専門のほうが楽しい」「辛いけど、いいね」と穏やかに微笑んだ。専門課程に入ったときは、1年次の科目とは比べようもない詳細さ、鮮烈さに感動したという。


 何度も辞めたいと考えた医学部バレーボール部は、今は続けようと思っている。同学科の人とのコミュニティの重要性を感じているという。一方で全学のバレーボールサークルでは、学部学科を問わずいろいろな人と関われることが楽しいと話す。北大2年目から加入した釧路にゆかりのある北大生が集まる「北大くしろ会」では、地元を同じくする人たちと話すことができる。三角食べのような課外活動に記者が言及すると、「バランスいいかな」と笑った。

 バレーボールの試合に出場する宗石さん(本人提供、写真の一部を加工しています)


 宗石さんは、ある友人と自らを比較して、「(友人のような医学生が)崇高な医者になっていくんだろうなって思う。高校入ったときから医者になりたいって、心から思ってるから。そういう人に比べて、自分は、釧路に帰りたいから医師になりたい、仕事としてやりたいと思っている。自分は崇高な医学生ではないと思う」と話す。それでも自らの未来を見据え、懸命に医学の勉強に励んでいる。将来は地元である釧路に戻りたいという強い希望が、受験勉強においても、現在の医学の勉強においても、原動力となっている。

将来は帰りたいという釧路の好きなところを尋ねると、「ご飯がおいしい。特に海鮮。あとは、札幌みたいな都会とは時間の流れが違う。人も街も、騒がしくもせわしなくもなくて、動物の鳴き声が聞こえるくらいがちょうどいい。それがいいんじゃないかな」。

宗石さんが大学で出会った友人と、釧路出身の友人が話したときに、大学の友人が「釧路を感じた」と言ったという。釧路独特の空気感と時間の流れが育てる性格のようなものがあるのかもしれない。宗石さんの、どこかつかみどころがなく、一方で人を惹きつけてやまない人柄の由来も、そこにあるのだろうか。札幌にいると少し疲れるという宗石さんが、2年生前期の期末試験が終了したその日に釧路に帰ったことも、彼の故郷への愛着を示しているように思う。

北大くしろ会のメンバーと宗石さん(本人提供、写真の一部を加工しています)


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