北大くしろ会 地元愛は必須じゃない。でも釧路と北大の架け橋に
「釧路の回転寿司二大チェーンの食べ比べをしませんか?」。8月上旬、北大くしろ会の代表、兒玉拓巳(こだまたくみ)さん(医学院博士2年)からこんなLINEが届いた。北大くしろ会は2023年4月設立の、釧路出身や釧路にゆかりがある北大生や卒業生、札幌圏の大学生から中心に構成される”県人会”だ。北大祭では2023年にソウルフードの「ミニフレンチドッグ」、2024年に「糠さんま」を来場者に振る舞った。特急で約4時間。地元から遠く離れた札幌で暮らすメンバー達が抱える、故郷への単純ではない思いに迫った。
変わった“県人会”、北大くしろ会の成り立ち
北大には同郷の学生から成る、多くの県人会組織が存在する。一方、北海道の一市町村・地域に限定した同郷サークルは稀だ。代表の兒玉さんは釧路出身。東京での社会人生活を経て、2023年に北大医学院博士課程に入学。釧路と札幌を行き来する中で、釧路出身の北大生に地元を理解してもらうきっかけ作りができないか、そんな思いから設立したのが北大釧路会(現北大くしろ会)だった。
普段の活動では、月に1回、10人前後の参加者が集まる。これまで北大祭の出店準備や、釧路での観光企画を行ってきた。また、札幌で手に入る釧路のソウルフードの試食会も行う。釧路出身の北大生を中心に、くしろ会のLINEグループには約60人が参加している。その一方で、卒業生などの「大人」も多く参加するのが特徴だ。学生主体だが、「大人も巻き込んだ裾野が広い」団体を目指す。北大釧路会は北大くしろ会(以下、くしろ会)に改称し、釧路近郊の出身者やこれまで釧路と関わりがなかった人にも門戸を開いている。つまり、くしろ会は「郷土愛」を前提とはしていないのだ。
美味しいのはどっち!?釧路回転寿司二大チェーン食べ比べ
釧路に直接縁のない人は普段、どんな活動をしているのか。設立当初からのメンバーである大崎美優さん(工学部2年)は岩手県出身。釧路を訪れたことはなかった。
取材当日、活動場所の机の上には店舗名が伏せられた2つの寿司桶が並べられた。
「まつりや」と「なごやか亭」。釧路市民なら必ずどちらかの「派閥」に属するという、札幌市内にも店舗を持つ2つの回転寿司を、どちらも行ったことのない大崎さんに勝敗をつけてもらうためだ。
「まつりや」と「なごやか亭」。釧路市民ならどちらかの「派閥」に属するという、札幌市内にも店舗を持つ2つの回転寿司を、どちらも行ったことのない大崎さんに勝敗をつけてもらうためだ。
「公正に審査できるよう頑張ります」。大崎さんと共に「まぐろ」を頬張った。
もちろんどちらの店の一貫も美味だ。しかし、身の厚みや繊維のきめ細かさには違いがあった。
同様に、さんまや甘えびなど両店のネタを交互に口へ運ぶ。味わう内に、それぞれのネタに対する考えが分かる。例えば、シーチキンは、片方はツナそのものの味を強調し、もう片方はサラダのように様々な野菜を使い、食感も楽しませてくれた。「これは脂のノリが違う」、「濃厚さがたまらない」と議論をしている内に全7種の食べ比べが終わった。勝者がどちらかはあえて述べない。
【次ページはこちら】「釧路の人の”釧路愛”は強いわけではない」