いちばんはじめの「専門書」第2回 奥聡先生(メディア・コミュニケーション研究院教授)【後編】

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今日の講義に、疲れたら。教科書を置いて、思い切って「専門書」を読んでみよう。講義室のあの先生だって、昔は学生だったのだから。寄稿連載「いちばんはじめの『専門書』」では、北大の教員や研究者に初めて出会った専門分野の本を教えてもらう。重たいページに挟まった過去のしおりを見つけたら、新たな世界が待っている。

「等身大」の大学生はどのようにしてアカデミアの道に進んだのか。今回「いちばんはじめの専門書」を紹介するのは、英語Ⅱや主題別科目「ことばを科学する:人間の再発見」、国際交流科目「HUSTEP」 などを担当する奥聡先生だ。学生時代には北海道大学交響楽団に所属し、現在も同団体の顧問を務める。入学式などの式典では自ら指揮棒を振る奥先生。自主ゼミで理論言語学の専門書を読み始めた元オーケストラ団員は、「学び直し」のために留学を選んだ自身を「楽観主義者だ」と話してくれた。

奥聡先生(撮影:高野)

前編はこちらから

オーケストラ活動

留学中の4年間を除き、オーケストラでのトロンボーン演奏、指揮はずっと続けてきた。北大の「全人教育」、研究教育だけではなく文化的な活動も大学コミュニティの重要な社会的役割ということばを方便に(?)、また、北大オケの常任指揮者、故川越守先生の人柄と音楽に惚れて、学生オケ・社会人オケで活動を続けてきた。音楽そのものが自分の言語学研究に直接結び付くことはないが、一方、趣味とは言えないほど高いレベルの音楽活動をしている著名な言語学者も少なくない(学会や講演会の懇親会でピアノ、歌、クラリネット、バイオリンの腕を披露することも)。コネチカット大のラズニック先生も、スコティッシュダンスのプロの指導員であり、ドラム奏者でもある。こうしたことからも、研究と音楽どちらも精一杯やるという姿にいつも憧れていた。研究がどんなに忙しい時も、オケ活動をやめるという選択肢はなかった。研究とは別の音楽活動がよい気分転換にもなっている。また、コロナ前、北大客員研究者として来ていたドイツ人数学者のP氏(現在スイス在住)は、チェロの名手で、私が指揮をする室内管弦楽団とサン=サースのチェロ協奏曲をクラーク会館講堂で協演。音楽が分野を超えた研究者とのコミュニケーションに大いに役に立っていると感じている。

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