3日間に思いを込めて ~文系祭~

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今年で4回目を迎える文系祭が準備され、開催されそして片づけられていく一部始終と、文系祭に込められた実行委員の思いに迫った。

5月下旬の午後6時30分、外はすっかり暗くなっていた。静まり返った文系共同講義棟(以下:文系棟)に足を踏み入れ少し歩くと、何やら2階から楽しそうに話す声がかすかに聞こえてきた。文系棟8番教室前で文系祭に向けた準備をしていた実行委員は北大新聞の取材に快く応じてくれた。

文系祭は、文系学部の魅力を伝え、文系学生に活躍の場を与えることを主な目的として、3年前に設立された。例年、実行委員側で決めたテーマに沿い、北大の文系4学部(文学部、教育学部、法学部、経済学部)の教授が講義をおこなう1テーマ講義や、サークルの発表などが行われてきたが、来場者数は思うように増えなかった。そこで今年は、規模の拡大と来場者数の増加を目標とし、SNSを用いた広報やサークル発表の拡張などに力を入れてきた。「文化系サークルに展示発表の依頼をしたり、新入生に向けた履修相談会を企画したりする中で直接的にも間接的にも文系祭が広がっていくことが嬉しい。このような積み重ねが当日の成功に繋がると思うとわくわくする」と文系祭実行委員会代表の山田涼生さん(文学部3年)。北大祭を目前にし、「文学部に近いサークルの発表が多いため、他の3学部の魅力を打ち出せる企画を増やしたい。研究室の発表も増えると良い」と今後を見据えて目標を語った。

↑文系棟8番教室前で文系祭に向けた準備をする実行委員会の様子(撮影:5月23日)

そして迎えた当日、文系棟には様々なサークルが集まった。北大短歌会の今回の会誌は「身体と短歌」。身体について詠った短歌やテーマなしで自由に詠った短歌、そして評論など合計十数作品が収録されている。短歌集は1冊600円で購入することができ、購入者には新作短歌を無料でプレゼントという特典もついてくる。出展場所が高等教育推進機構(以下:教養棟)から文系棟に変更されたことで客の出入りは去年に比べると減ったものの、多くの人が見に来てくれているという。会員も増え、9月に東札幌で開催される札幌文学フリマへの出展も決まっており、精力的に活動している。

北大短歌会と同じ部屋で出展していたのが北大言語学サークル。無料で配布しているという冊子は、言語学や古学の理論の中で部員の興味のあるものについて調べて書き、部員一同で内容チェックを繰り返して仕上げたこだわりの一冊だ。今回の発表について部員は、「教養棟からの場所移動により立ち寄ってくださる方は減ったように思うが、その分このサークルに興味がある方々が多く来てくださるようになったので嬉しい」と語った。

推理小説研究会は会誌「とかげのしっぽ」を販売。今年のテーマは「毒」だという。個人個人が熱を込めて執筆した会誌は昨年度より紙幅が増し、かなり分厚いものとなった。推理小説研究会というサークル名だが推理小説以外の読書も幅広く楽しんでおり「来年は今年を超える会誌を出したい」と意気込んだ。

今年から文系祭に出展を始めた団体もある。文芸部がその一例だ。9人で寄稿した10作品が掲載されている分厚い部誌を販売しており、大人や高校生の購入者が多いという。初の文系祭について、部員は「このような発表の場で実際に他の方と交流が出来て嬉しい。宣伝としてのチラシ作りやnoteでの過去作発表の成果を実感している」

文系祭を訪れていた男性は北大の47年前の卒業生だといい、コロナの制限がなくなった北大祭について、「昔に戻ったみたいで嬉しい。教室展示も模擬店も回り楽しく過ごしている」と笑顔を見せていた。

このように例年よりも賑わいを見せた文系棟を見て、文系祭の創設者であり自身が文系祭に携わるのは今年で最後だという金井理仁さん(文学院修士2年)は「コロナ禍や人手不足などに直面したこともあり、4回目でようやく学祭らしくなり嬉しい。文系祭をずっとやってきて、イベントをゼロから作り上げ運営する難しさと楽しさを知ることができた。文系祭を中心に1年を過ごしており、自分にとっての1年というのは文系祭のこの3日間のためにあると思っているくらいだから、終わってしまうのは寂しいが、良い満足感と疲労感だ。この調子で最後までやり切りたい」としみじみとした様子であった。

9日PM4:30

他の模擬店と同様、文系祭の片付けも始まった。文系棟の入口に設置された受付テーブルの上のパンフレットは全て捌かれ、文系祭に彩りを与えていたカラフルなポスターも外された。片付けをしていた実行委員は「文系棟を回ってもらうためのスタンプラリーは効果抜群だった」「自分が作った広報のビラなどのデザインがお客さんから反響があったことがすごく嬉しかった。来年までには文系祭のホームページを作成したい」、文系祭に出展したサークルは「普段のサークルはオンライン開催が多いので参加者同士が対面で会えて良かった」「場所が変更になっても去年のお客さんがまた来てくださったことが嬉しい」などと3日間の感想を口にした。祭を無事終えるまでの間には衝突もあったが、それも文系祭の醍醐味だという。「実行委員の後輩のみんなには無理をさせてしまうこともあったのでまずは頑張った自分を労ってほしい。反省は来年に活かしつつのびのびと活動してくれたら嬉しい」と実行委員の3年生は後輩への思いを口にした。

毎年後輩が先輩の思いを引き継いで作り上げる文系祭の3日間。来年はどのような3日間になるのかが、今から楽しみである。

↑受付テーブルからはパンフレットが捌かれどこか物寂しい

↑文系祭を彩ったポスターも役目を終えた様子

(執筆:武田、取材:武田、品村、高野、小田、撮影:武田、小田)