北大生の死亡事件を受けて ヒグマとの共生を考える

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2023年10月、北大水産学部4年の学生が、北海道松前郡の大千軒岳で遺体となって発見された。ヒグマに襲われたとみられている。北大新聞では、この悲惨な事故を風化させないため、事件やヒグマについて報道を行っている。11月には道内の大学生向けにヒグマに関する認識調査を実施し、調査結果をもとに北大学務部学生支援課に学生生活に関わるヒグマの問題への対応状況を取材した。

北大新聞は同年11月11~16日に「道内大学生のヒグマに関する認識調査」を公式X(旧ツイッター)上で実施。回答件数は251件で、93.6%が北大生であった。男性は70.1%、女性は29.1%だった。

ヒグマ遭遇時の対処法 7割は知らず

調査の結果によれば、97%の学生が今回の事故について知っていた。その上で、日常的にヒグマの出没情報を話題にあげ恐怖を共有したり、ニュースをよく見て事故などの情報を確認したりしているという意見が多くあった。ヒグマを実際に見たことがあるという回答は少なかったにもかかわらず、やはり道内の大学生にヒグマに対する恐怖は根づいているようだ。

しかし、「ヒグマの被害を減らすための知識はあるか」という問いに対して『ある』と答えたのは28.3%にとどまる。ヒグマに遭遇した際の対処法を聞いた質問でも、正しく回答した学生はほとんど居なかった。多くの学生は、対処法を知らないまま漠然と恐怖を抱いているようだ。

「道内大学生のヒグマに関する認識調査」集計結果より

このことからか、ヒグマに関して読みたい記事として、ヒグマに遭遇したときの対処法を挙げる意見が最も多かった。また、大学当局に対してもヒグマに対する危険性などのアナウンスが不十分であると59%の人が感じており、メールでの注意喚起やヒグマ問題を扱う授業の開講を求める声が上がっていた。

一方で、学生支援課は北大新聞の取材に対し、事故を受けたメールでの注意喚起は「重大で北大への影響が大きいものであっても被害者や被害者の関係者の心情を考え、実施しなかった」と回答している。また、今まで開講されていたヒグマの生態やクマ駆除について学ぶ「ヒグマ学入門」が昨年度は開講されなかった理由については具体的に回答しなかった。

報道に対して危険性周知を求める声

望ましいヒグマ報道のあり方については、危険性を周知するべきだという声が相次いだ。駆除にクレームを入れたりクマに同情したりする人が現れないようにするべきだ、という意見だ。現在は、札幌市に対して、その危険性を理解していない人々から「ヒグマを駆除するのはかわいそう」「保護するべき」などといった苦情が相次いでいる。こうした苦情に対しては、人命が奪われる事態に繋がりかねないと懸念する学生が多いようだ。

我々がヒグマとともに暮らすためには、一人一人がヒグマは我々の命を脅かす存在であることを理解した上で、ヒグマに遭遇した際には適切な対処を行う必要がある。そのために、ヒグマの危険性を強く警告した上で、遭遇した際の正しい対処法を周知するような報道が求められるだろう。北大新聞では、今後専門家などに取材をして、ヒグマの生態や遭遇時の適切な対処法を探っていき、報道していく予定である。

執筆:赤松 取材:野中・高橋・宇高