「D-RED」の新拠点開所 融合研究とデータサイエンスの活用で社会課題の解決めざす
19日、北大のデータ駆動型融合研究創発拠点(D-RED)の開所式が、同拠点の置かれるD-RED棟(札幌市北区北13条西10丁目)で挙行された。D-REDは、北大と企業の連携による社会課題の解決や、北大発スタートアップ企業の設立支援など、産官学連携の場としての発展を目指す。
D-REDが作られたのは、北大が情報科学を用いた融合研究に強みをもつからだ。北大では、土木工学や食品科学などと情報科学を組み合わせた学際的な研究が盛んに行われてきた。その研究力を背景に、官庁や企業と共同で研究開発を行うのが同拠点の役割だ。北大の持つ多様な研究分野の知見と、社会に蓄積されたビッグデータを情報科学を用いて解析する「データ駆動型サイエンス」を活用し、産官学連携の下、地域の課題解決を目指す。
また、拠点長の長谷山美紀副学長によると、D-REDは、地域の経済を活性化させる、大学発スタートアップの拠点としての役割も果たすとのことである。D-REDは、北キャンパスにある、主に健康に関する研究開発を担うFMI(フード&メディカルイノベーション国際拠点)とは異なり、地域社会の活性化に繋がる研究開発の推進を目標とする。同拠点は既存企業との提携のみならず、スタートアップ企業を対象とした支援も行っていくという。
D-RED棟は工学部の裏側で農場に隣接する位置にあり、「北大らしい風景が広がり、ベストな場所」だと宝金清博総長は語る。建物内にはラボだけでなく、ディスカッションスペースや飲酒を伴う談笑などにも使えるラウンジなどを備えている。「米国西海岸で、ある企業のラボを訪れたときに感じた自由な空気を、『いつか本学にも』と思い続け、やっと実現した形」だと、長谷山氏は語った。
D-RED棟には現在東日本高速道路(NEXCO東日本)やニトリホールディングス(HD)なども入居し、D-REDとの共同研究を行っている。前者は高速道路の保守点検などの自動化の研究を、後者は高度なIT人材の育成を目指す、「ニトリみらい社会デザイン講座」を組織している。
同拠点に入れるのは、参加企業の社員や研究員(一部博士課程の学生も含む)に限られ、一般の学生は入れないことに注意が必要だ。
産学に蓄積されたデータを存分に活用した学際研究の進歩と、北大発スタートアップの今後に注目だ。
(取材・執筆・撮影:小田・加藤)