北大発の市民団体、札幌のホームレスとともに24年―北海道の労働と福祉を考える会【中】
20年続いたのは、目標を明確に立てなかったからかもしれない
現在の労福会の具体的な活動はなんですか、と聞いたら。意外にも、明確に定まってはいないそうだ。
「はじまりは調査だったから、いわゆる市民『活動』団体じゃないんだよな。ホームレス支援のために、できることを色々って感じかな」
毎週土曜日にホームレスに食料品などを配りつつ話を聞きに回る「夜回り」や月に1回生活困窮者に洋服や温かい食事などを提供する「炊き出し」が代表的だが、活動はそれだけではない。生活保護申請の補助や、住居確保の支援なども活動の1つだ。
であれば、目標はやはり「脱路上」か。そう聞くと、これまた意外な答えが。「会員によって、考え方が違う」のだという。
「アパートで暮らし始めた元ホームレスの人が、電話をかけてきたことがあって。あったかい部屋で暮らせててありがたいけど、路上と違ってお部屋にいるとずっと1人でなんだか寂しい、って」
「ホームレス」も、1つの生き方なのかもしれない。住むべき家を見つけるだけでは、問題は解決しないのかもしれない。団体として「迷い」を抱えながら、活動を続けているという。
労福会は、70人ほどの会員と幅広い年齢層のボランティアで活動する団体だ。当然、団体内での意見の相違はあるだろう。ただ、それでも。「現場に行けば、自然とやることは見えてくる」と、山内さんは教えてくれた。
「社会には『チームをまとめるには共通の理念が必要だ』みたいな意見もあるけど、意外とそんなこともないよ。広く、ゆるくやってきたから、いつの時代も人が来た」
20年続けた後だから色々言えるだけかもしれんけど、とうしろに小さくつけ加え、山内さんは笑った。
課題解決のアクションをグループで考える、そんな授業は学内で数多く開講されている。実際に課題解決に取り組もうとする、そんな学生団体も学内外で数多く活動している。彼らの活動は、どれほど続くだろうか。どれほど広がるだろうか。そのカギは意外にも、「想い」以上に「現場」を伝える努力にあるのかもしれない。
(取材・撮影・執筆:田村)
※所属・肩書きは全て2023年3月31日時点のものです。