北海道大学白菊会「感謝の解剖」からつながるもの

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解剖に不可欠な献体が、減っている。医療に関わる職を目指していない読者には、献体や解剖学実習に対して関係の薄さを感じるかもしれない。しかし、医療はあらゆる人に一生関わり続けるものだ。

医療系の学部において行われる「解剖学実習」に必要な献体の数が減少している背景と、白菊会の取り組みについて取材した。

本学白菊会事務局が置かれている本学医学部(撮影:3月10日)




「ご献体」が学生のもとに届くまで・届いてから

医学部医学科や歯学部、一部の医療系学部のカリキュラムに、「解剖学実習」というものがある。2年次において、4人の学生が1つの班となって、人体の構造を学ぶために解剖を行う。

人体解剖には3種類ある。死因を解明するための法医解剖、病気の原因を調べるための病理解剖、そして人体の構造を学ぶために行われる正常解剖だ。医療系学部においては、正常解剖が行われている。

こうした篤志献体を行うための組織が、各大学におかれている。生前に、死後に献体をする意思のある会員が入会する。会員が死去すると、運ばれた遺体には防腐処理が施され、解剖学実習を行う医歯学生のもとへ届けられる。解剖を終えた献体は火葬場へと運ばれ、遺骨となって遺族のもとに帰る。こうした過程を、管理するのだ。

大学によってさまざまな名称がついているが、本学においては「北海道大学白菊会」(以下、本学白菊会)だ。

解剖学実習が学生に与える影響は大きい。「大学を卒業して医師・歯科医師になっても、解剖学実習だけは皆覚えている」と語るのは、本学白菊会の事務局代表を務める、本学医学研究院解剖発生学教室の渡辺雅彦特任教授だ。

「教科書の図を見ていてもわからないことでも、解剖をやって初めて理解できることはたくさんある」

実習初日はどの学生も献体にメスを入れることをためらうが、2日目からは本物の筋肉や臓器を観察できる機会の貴重さを自覚して、人体の構造への純粋な興味を持ち実習に臨めるようになるという。


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