「ノリ」も企画の大事なテーマ 恵迪寮祭
また、A棟2階内側では「ネコカフェ」が開かれており、ここでは客が食事をできるだけでなく、「ネコ」(寮生)にツナ缶などのご飯を与えることができる。部屋の中に入ると、全身を思い思いのネコの色に染め、ふんどし姿の「ネコ」達の姿があった。サービスは一般的なネコカフェと同様に、ネコとねこじゃらしで遊んだり、餌をあげたりできる。先ほどの「サンリオカフェ」と同様に「ネコ」としての挙動や鳴き声などを再現した接客とネコカフェとしての完成度に驚かされた。「ネコ」の一人は「最近は農場のネコがちやほやされているが、恵迪寮の「ネコ」のことも忘れないで欲しい」と語っていた。
実行委員長の浅井さんは恵迪寮を、「(自分が)何かをやりたいと思うことに協力的に参加してくれる仲間が多い場所」と語っていた。「ノリ」とは周囲の調子に同調するなどの意味があり、あまり良い文脈で使われることが多くない。寮生らが「ノリで完成させた」と自認する恵迪寮祭について浅井さんはこう語ってくれた。「自治寮では自分のやりたい事の最終決定権は自分にある。それと同時に寮全体にも自分が責任を負います」
恵迪寮は「訪れるべき場所」
恵迪寮内を巡って多くの参加者に話を伺う中で、恵迪寮と直接的な関係がない人も多く恵迪寮を訪れていた。テレビ番組で恵迪寮を知ったという男性は恵迪寮について「一度は見ておかないといけない(場所)」と話していた。
また、孫が恵迪寮で暮らしている寮生の祖母は「今でもこうした場所に若い子達が暮らしているのは驚き。ユニークで見ていて飽きない」と話していた。実際に恵迪寮内を見て回った前述の男性は「素晴らしかった」と神妙な面持ちで語ってくれた。札幌市内から訪れた2人組の女性は、「(恵迪寮は)前に一度来たことがあって、(友人と)一緒に見ておかないといけないと思って(友人を)誘った」と語っていた。普段は入ることが難しく、多くの人にとってミステリアスな恵迪寮を見て回ることのできる一般公開は多くの人に恵迪寮の未知なる新鮮な光景を写したであろう。
悪ノリだけが「ノリ」じゃない
新型コロナウイルスの流行に伴う北大のBCP行動規制が存在した去年とは違い、制限が無く行われた今年の寮祭では多くの企画が寮生らの「楽しみ尽くそう」という思いのもとに、無事終了を迎えた。今年は北海道に拠点を構えるアイドルグループのライブも寮内で催され、かなりの賑わいをみせた。学生による自治を行っている恵迪寮生達が青春を共に暮らす仲間達と昇華させる、その中心的イベントである恵迪寮祭。時に仲間同士で奇抜なコスプレや仮装を行いながら、多様な価値観、趣向を持つ人が集い、共に一つのモノを作り上げる同イベントが北大内にとどまらず多くの人にとって新鮮味あふれる刺激的な体験であることは疑いの余地がない。
(取材、執筆:高野)