【受験特集:どんな道でも、道は道】 第3回(3) 勉強だけがすべてじゃないけど、受験勉強するといい 黒川滉太さん(文学部2年)
「大学には、いろんな人がいる」そんな言葉は、誰しも一度は耳にしたことがあるだろう。だが、私たちはまだ「いろんな北大生」が北大生になった時の話を知らない。聞けそうで聞けない、在りし日のそんな話を取り上げるのが今回の特集「どんな道でも、道は道」だ。はたから見れば小さな、でもそばにいれば大きな選択にじっと耳を傾ければ、等身大の北大生が見えてくる。
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今回の主人公は、文学部2年の黒川滉太さん(22)=徳島・県立城ノ内高校(現・県立城ノ内中等教育学校)卒業=だ。英語の授業で記者と初めて会った時に「一度入った大学を自主退学して北大に入学した」とあっけらかんと話してくれたその姿を見て、特大スクープよりも友達の記事が書きたいと初めて思ったことを覚えている。合格して喜んだ後の話が聞きたい、と取材を申し込むと二つ返事で引き受けてくれた黒川さんの道のりに、記者が迫った。(取材:田村)
2度目の受験生か、2度目の1年生か
「1月8日やったわ」と、黒川さんははっきり言い切った。大学をやめる、と初めて親に伝えた日のことだ。
正月の帰省で励まされ「がんばろう」と思ったのは確かだが、休みが明けて最初の授業へ向かう一歩はそれでも踏み出せなかった。「大学の勉強に関してはもう、鬱に近い状態やったんかな」と、黒川さんは当時を振り返る。実家へかけた電話では口論になったが、それでもはっきり「やめてやる」と宣言した。
しかし、次年度の入学に向けたセンター試験まで残された日数はわずかに10日ほど。試験対策はおろか出願すらしていない黒川さんが次の4月から別の大学へ通うなら、私立大学の一般選抜を受験する以外に選択肢はない。1年間のブランクの大きさを初めて悟ったのは、近くの書店で私立大学の過去問を見た時だ。
「英語とか数学の微積は大学でやってたけど、古文とか全然思い出せんかった。そこで初めて『今私大受けても多分無理やな』って」