【受験特集:どんな道でも、道は道】第1回(1) 進学か就職か、出した答えは「北大へ」 野中直樹さん(理学部3年)
それでも一部の中堅私大に合格する学力はあったのでは、と問う記者に野中さんが語ったのは、自身が置かれた家庭環境だった。学歴の差をはね返し東京大学や海外の有名大学を卒業した同僚とも仕事をしていた父は、高い学費を払ってまで中上位の私立大学に野中さんが進学する意味はないと考えていたという。
「弟や妹だって3人いたし、お金がたくさん使えるわけじゃない。大学に進むなら、奨学金をもらって国公立に行くしか選択肢がなかった」
とはいえ、高校にやってきた求人票にも魅力を感じなかった。進路に迷う野中さんの手は、勉強机からどんどんと遠のいていく。
「受験が近づくと、毎月のように学校で模試を受けさせられる。復習もろくにできないまま次々とやってくる成績表で現実を見せつけられ、勉強が嫌になった」
結果、野中さんは受験勉強も就職活動もしないまま2018年3月に高校を卒業する。進路が決まらない事実を伏せるため「受験してるフリ」で締めた高校生活は、センター6割の得点開示通知だけを残してあっけなく幕切れを迎えた。
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