史上初の北海道分水嶺連続踏破 ドキュメンタリー番組がNHKで放送 ―本学OB 野村良太さん

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本学水産学部出身で登山家の野村良太さん(28)は、2022年に64日をかけ北海道の雨水を分かつ分水嶺の連続踏破に史上初めて成功。その様子を収めたドキュメンタリー番組が12月30日にNHK総合にて放送される。

先人の後を追って、史上初の分水嶺連続踏破

 野村さんは大阪府豊中市出身。2014年、本学への入学と同時に、登山を中心としたさまざまな課外活動を行うワンダーフォーゲル部に入部した。水産学部は3年時に函館キャンパスに移行するため、2年間で卒部するはずだったという。しかし、「あれよあれよという間に沼にはまっていった」。休学届を出しさらに2年間部に残ることを決め、第62代主将として活躍した。いつもオレンジ色の服を着ていたことから「オレンジ」のニックネームで部員から親しまれ、今なお部でその名は語り継がれているという。本学卒業後は札幌を拠点として、夏は山岳ガイドを、冬は雪山を縦走(注)する生活を送っている。

(注) 縦走 尾根伝いに山を歩き、多くの山頂を踏破する登山形式。

ワンダーフォーゲル部所属当時の活動(18年3月、本人提供)

今回野村さんが挑んだのは、宗谷岬から襟裳岬まで北海道の雨水を東西の海に分ける分水嶺をたどるルートで、その距離はおよそ670 kmにも及ぶ。今までの記録では、全ルートを複数回に分けて踏破しており、何年もの歳月がかかるのが常識だった。

野村さんが同ルートの連続踏破に挑戦しようと思ったのは、1992年に17年をかけ同ルートを初めて制覇した工藤英一の本がきっかけ。

「(若き岳人に希望をこめて)いつの日か誰かに、人並みはずれた艱難辛苦に耐える精神力と強靭な体力の持ち主に、(北海道分水嶺連続踏破に)挑戦して実現してもらいたい」(工藤英一著『北の分水嶺を歩く』のあとがきより)

「『若き岳人』がぼくのことにならないかなと思い、できるかできないかわからないけどやってみたいなと思っちゃいました」と野村さん。山岳ガイドとして自信が欲しかったこともあり、連続踏破の構想を練り始めたという。

初めて挑んだ2021年は、計画に手探りな部分が多くルートや時期などに誤算があり10日で下山。その反省を踏まえ1年近くをかけ計画を見直した。2度目の挑戦となった2022年は2月26日に宗谷岬を出発し、縦走中思わぬアクシデントに見舞われながらも4月29日に襟裳岬に到着。北海道分水嶺連続踏破に史上初めて成功した。

「ワンゲルでの経験生かせた」試写会で縦走時の思い語る

12日に行われた試写会で上映されたドキュメンタリー番組では、縦走時に記録した日記や映像とともに縦走の苦境や喜びがありのまま映し出された。

北海道分水嶺縦走の様子(22年4月、NHK提供)

上映後、野村さんは縦走について「帰ってきてから半年以上経っており、他人事というかすごく昔の自分を見ているような気分になりました。自分のことなのによく信じられなくて本当にやったのかなぁという気持ちです。番組ではもうちょっとかっこよい場面がたくさんあると期待したんですが、わりと情けないシーンが多くそれも僕らしいのかな」と振り返った。

本学のワンダーフォーゲル部での活動も今回の縦走に生かせたという。「部活では上級生になると、未熟な下級生を連れていく立場になるんです。そのときに下級生のあの子でも問題なく付いてこられるかと考える機会が多かった。客観的に人を見ることで自分のことも客観的に見られるようになり、その経験は今回自分がいけるかどうかの判断をするときに役に立ちました。また、学生時代は北海道の山にたくさん登っていたので、色々な山域の天気やルートの特徴が縦走前から頭に入っていました。それもうまくいった要因の一つかなと思います」

<放送予定> 「白銀の大縦走~北海道 分水嶺ルート670キロ」

2022年12月30日(金) 午前7:20~8:19(59分)<NHK総合・全国>

2023年1月21日(土) 午後7:30~8:59(89分)<NHKBSP・全国>