「建築通して対話を」、授業で制作した模型・図面を展示 ―第3回 建築の学生展

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工学部と文学部の学生有志が主催する「第3回 建築の学生展」が8・9日、本学総合博物館1階企画展示室・知の交流ホールで開催された。同展では工学部で建築を学ぶ学生が授業で制作した建築模型や図面など14作品を展示。作品を制作した学生も会場に出向き、作品の説明をしたり来場者からの質問に答えたりするなど、建築を通して訪れた人々と交流した。

企画展示室では、「おかえりの町」と題し、集合住宅やアーケード商店街などの7作品を展示。山田悠介さん(工学部3年)、奥香奈美さん(工学部3年)は授業で制作した五輪団地(札幌市南区真駒内)のリノベーション案を出展した=写真1・2。同団地は1972年に開催された札幌オリンピックの選手村として建てられ、開催後は団地として使われているものの、一斉入居による少子高齢化などの問題があるという。

写真1 「団地で移り住む」(制作:山田悠介さん)。4人兄弟の長男で現在実家を離れて1人暮らしをする山田さんは、子供の成長などによって家族に必要な空間の大きさが変わることに着目。ライフステージに合わせて部屋数を調整できる集合住宅を考えた(8日、本学総合博物館1階企画展示室)
写真2 「まこまないすくすく団地」(制作:奥香奈美さん)。子育てをしやすい環境をつくるため「シェアラウンジ」や「おさがりコーナー」を設けた。1・2階の共用スペースには円や弧の形を多く採用。人々が集まりやすいように動線を工夫することで、子育ての大変さや楽しさを共有しやすい空間を意識した(8日、本学総合博物館1階企画展示室)

知の交流ホールでは、「おでかけの町」と題し、図書館や美術館などの7作品を展示。大澤菜緒さん(工学部4年)、髙橋陸さん(工学部4年)は卒業設計で制作した作品を出展した=写真3・4。図書館の模型を出展した堀下葵さん(工学部3年)は「建築を専門とする人とは角度の違う意見を聞くことができ貴重な機会だった」と話した。

写真3 「都市の地景」(制作:大澤菜緒さん)。本学札幌キャンパス南の北7条西7・8丁目を、大学の研究室や企業のオフィスなどが集まるインキュベーション施設に再開発する計画。曲がった道や起伏が残る特徴的な地形を生かし、曲線的な構造物を張り巡らせた。「効率だけを求めるのではなく、その場所にしかないものを感じられるようにしたい」と大澤さん(8日、本学総合博物館1階知の交流ホール)
写真4 「札幌市時計台の愛し方」(制作:髙橋陸さん)。1878年に建てられ、長い歴史を持ちながらも現在は高いビル群に囲まれ存在感が薄れてしまった時計台の再開発案。郵便局や図書館などさまざまな目的に使われてきた「営みの蓄積」を、文字通り様々な施設を積み重ねることで表現した(本人提供)

同展学生代表の佐々木悠貴さん(工学院修士2年)によると、授業で模型や図面を見るのは教授や実務者など建築を専門とする人が中心で、専門外の人に見てもらう機会は少ないという。2018年、工学部3年だった佐々木さんは、授業で制作した作品を一般の人にも見てもらいたいとの思いから、同期の学生とともに本学の遠友学舎で建築模型展を開催した。

当時は作品を展示するだけだったが、訪れた人々からの質問に答えるうちに、対話を通して理解を深めてくれる人もいることに気づいたという。翌年、総合博物館で開催した「第1回 建築の学生展」からは作品を制作した学生も会場に出向いて自分の作品の解説を行い、訪れた人々と積極的に交流するようになった。

今回は工学部の学生21名に加え、建築を専門としない文学部の学生6名も準備・運営に加わった。会場のレイアウトに携わった中村ゆりあさん(文学部4年)もそんな学生の一人だ。「普段建築を見るのは街を歩いているときなので、会場も街のようなレイアウトにした」。会場にはあえて順路を設けず、来場者が実際に街を歩くような感覚で作品を見られるようにした。「学芸員の仕事のようで、特に制作者に直接話を聞きながらレイアウトを考えられるのは刺激的だった」と中村さん。

市内から訪れたという50代の男性は「丁寧に作られていて、コンセプト・目的がしっかりしていた。学生との話も楽しかった」と笑顔を見せた。会場には初日から多くの人が訪れ、来場者数は2日間で850人を超えたという。佐々木さんは「一般の人も建築に対して高い関心をもっていることを、対話を重視する展示だからこそ実感できた。僕は今年で卒業するので、後輩たちが展示方法などを工夫して引き継いでくれたら」と話した。