北大病院、日糧製パン・ローソンと共同で減塩パンを開発 売れ行きは好調
北大病院、日糧製パン・ローソンと共同で減塩パンを開発 売れ行きは好調
北大病院とローソン、日糧製パン(札幌市豊平区)は1年以上の試作を経て、「塩を加えずに焼き上げたロールパン2個入」(以下減塩ロールパン)を開発した。減塩ロールパンは9月13日から道内のローソンで販売が開始され、多くの店舗で品薄になってしまうほど好評だ。北大新聞はパンの開発に携わった熊谷聡美さん(北大病院・管理栄養士)、池田陽子さん(北大病院・管理栄養士)、本学の坂本直哉教授(北大病院栄養管理部長)を取材した。
減塩パン開発のきっかけ
減塩パン開発が始まったのは、文部科学省と科学技術振興機構が実施していた産学官連携プログラム、COI(センター・オブ・イノベーション)に本学が選ばれたことによる。それに伴い、本学は2019年に「食と健康の達人」拠点を設置。北大病院はCOIの一環として、食塩の摂取量減少が健康につながることに着目し、無塩パンのレシピを開発してきた。
塩分を取りすぎている日本人
塩分の取りすぎは高血圧をはじめとした生活習慣病の原因となる。厚生労働省が策定する「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、生活習慣病の発症予防を目的とする食塩の目標量は男性で7.5グラム未満、女性で6.5グラム未満だ。ただ2019年の「国民健康・栄養調査」によると成人男性は10.9グラム、成人女性は9.3グラムの食塩を摂取しており、大幅に基準値を超えている。坂本教授は「そもそも日本食には塩分の多い料理が多いことも一因」と話す一方、「昨今はコメの消費量も減っていて、パンを食べる機会も増えたことも原因」だと指摘する。
ご飯とは異なり、パンは製造の過程で食塩を入れることが一般的で、実際に6枚切りの角型食パン1枚には約0.72グラム(日本食品標準成分表2020年版(八訂))含まれている。熊谷さんは「基準を守って献立を作ろうとした場合も、減塩されていないパンだと塩分の少ないおかずしか合わせられないので、おかずのバリエーションが限られてしまう」と話す。
おいしい減塩パンの実現に向けて
「おいしいものを作らなければ、みんなに食べてもらえない」と3人は話す一方、単にパン作りの工程で塩を使わないだけではおいしいパンはできない。パンに使う食塩の量を抑えると、その分食べたときの塩気が少なくなったり食感が損なわれたりする。これらの弱点を克服するため、減塩ロールパンには豊かな香りの道産全粒粉と道産小麦が多く使われている。
しかし、単に全粒粉を加えるだけではパンが固くなってしまっただけでなく、表面がしわしわになってしまったという。池田さんは「日糧製パンの担当者の方に何度も試作してもらい、ふんわりとしたやわらかいパンができた」と振り返る。
記者も減塩ロールパンを実食してみた。一口食べただけでも全粒粉の芳醇(ほうじゅん)な香りがいっぱいに広がる。歯触りが良い生地は、クリームを思わせるほのかな甘みがあり、いろいろな料理に合うように感じた。
道内のローソン679店舗での販売に加え、病院食としての提供も開始
北大病院が監修した食品が道内各地で大規模に販売されたのは初めて。9月13日に販売が開始されたばかりだが、売り切れになっている店舗も多いという。「病院監修=おいしくないというイメージを持たれている方も多いかと思っていたが、思いのほか好評だった」と熊谷さんはうれしそうに話す。
また、病院食として提供できるように、減塩ロールパンにはアレルギーの原因となる材料を極力減らした。北大病院の病院食としての提供も始まり、熊谷さんは「自分たちが開発したものを提供できるのはうれしい」と語る。
次は減塩食パン開発へ
池田さんは「今回は減塩ロールパンを開発したが、次は食パンの減塩に取り組みたい」という。北大病院では現在、減塩パンの納入をしていた企業の事業縮小のため、医師から減塩食の指示がある患者には食パンの提供がされておらず、減塩食パンの必要性を感じることも多いという。池田さんは「技術的に難しいことも多いが、いつかは開発したい」と今後の展望を語った。