日本の照明文化の価値を再発見 「おうちの灯り展」

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あかりプロジェクト主催の「おうちの灯り展」が7月15・16日に行われた。展示会場は札幌市営地下鉄東西線の西18丁目駅近くの庭ビル。展示会では、道内で活動する照明作家(ORITO・そら豆ガラス商店・クドウテツト・lämpö(ランプ)・草灯・tannoworks(タンノワークス)、作家名は敬称略)が「月」をテーマに作品を展示・販売した。

同プロジェクトは、日本の照明文化に対する問題意識から立ち上げられた。日本の家庭の照明の多くは白く明るいため、帰宅後の夜の時間にも、脳が活発な状態に保たれてしまう。その結果、脳が休まる暇なく活動を続け、ストレスを抱えてしまう人が多いという。 

展示会を企画した上坂海月(くらげ)さん(文学部3年)は「日本の照明文化の変革のためには、人々の照明に対する意識を変えることが重要。日本人が照明に対して、より価値を見出すようになれば、これらの問題は解決に向かうと思う」と語った。そのような思いから、この展示会ではあんどんや燭台(しょくだい)など、日本独自の照明文化の良さを再発掘し、「灯り」の価値を来場者に認知してもらうことを目的として行われた。

道内の照明作家が出品

写真1 展示会の様子。会場内は薄暗く、壁や天井、そして来場者の体を暖かい光がぽつぽつと照らしていた(7月16日)

展示会に出展した作家のクドウテツトさんは木工の照明装飾品やキャンドルホルダーなどを手掛けている。

写真2 クドウテツトさんの作品(7月16日)

クドウさんはオニグルミの木を透かし彫りという技法で加工した照明装飾を出品した=写真2。木の枝葉をモチーフにした装飾が白熱電球の明かりを遮り、部屋全体に陰影ができる。日本の芸術で、陰影は表現技法の一つとして古くから好まれてきた。明るすぎず、部屋にクルミの葉の影を落とす様子は、ずっと見ていても飽きない。

クドウさんは材料の選定から加工、販売までを自身で行っている。「照明は絶対に毎日使う。そんな風に生活と深く結びついているものを自分の手で作成することに、とても魅力を感じている」

東川町で蜜ろうキャンドル作りを行うlämpöも出品した。キャンドルに使うろうは、蜜を取った後のミツバチの巣を手作業で煮詰めて作られるという。ろうの色は蜜源によってまちまちで、作品一つ一つが個性をもって輝いていた。

写真3 ダウンバースト現象(注)で倒壊してしまったシラカバの木を加工したキャンドルホルダー。シラカバの切り出しや加工には、北大森林研究会が協力した(7月16日)

lämpö代表の古川敬美さんは、キャンドルの良さを「ともすことで気持ちを緩ませ、気持ちを切り替えるスイッチになるところ。非日常な体験ができることも魅力だと思う」と説明。「皆さんもぜひ、疲れたときにはキャンドルをともしてみてほしい」と呼びかけた。

「おうちの灯り展」は、照明がただ部屋を照らすだけでなく、心安らぐ時間を作りだしてくれることに気づかせてくれた。あかりプロジェクトが日本の照明文化にどのような影響を与えるのか、今後の活動にも注目したい。

(注)積乱雲から吹き降ろす下降気流が地表に衝突して水平に吹き出す激しい空気の流れ