樹木が安定して生長する仕組みを解明 タワー建設などへの応用に期待 ―工学院・工学研究院の研究グループ

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今回の研究の概要(プレスリリース引用)

本学大学院工学院修士課程の金浜瞳也(かなはまとうや)さんと本学大学院工学研究院の佐藤太裕(もとひろ)教授の研究グループは、重い体を有する樹木が安定して生長する仕組みを構造力学の視点から解明した。幹だけでなく枝葉の影響を考慮した最大高さの定式化は初めて。

自然の樹木に近いモデルを目指して

樹木は光合成のために高く大きくなる必要があるが、ある高さに到達すると自身の重さによって倒れてしまう。そこで、樹木が樹体を支えつつできるだけ生長するための仕組みを明らかにする研究が行われている。今までは幹の影響だけを取り入れた式が利用されていたが、枝葉の重量が占める割合は無視できないとして、今回の定式化が進められた。

今回の研究ではまず、樹木を密度が変化する円柱として考え、重量の分布がどのように影響を与えるかを検討。重量の分布を示すパラメータ、基準点の密度、高さを利用した密度の式を立てた。次に幹の重量を一定として、枝葉の部分の密度が変化するモデルを設定したという。

樹木がたわんだ状態での釣り合いの微分方程式にこれらの密度分布の式を代入して計算。その式を用いて幹に対する枝葉の重量比、枝葉の分布を表すパラメータ、枝葉が一切ない状態での最大高さとの比の関係をグラフにした。(図1)

幹に対する枝葉の重量比が10~60パーセントほどであるとしてグラフを読むと、枝葉が下部に集中するようなモデルでは樹木の最大高さが約1~7パーセントほどの減少で済んだという。このことから、樹木が枝葉を下の方に集中させることによって大きく生長できることが分かった。

(図1)枝葉の重量比、枝葉の分布を表すパラメータ、枝葉が一切ない状態での最大高さとの比の関係のグラフ
(金浜瞳也・佐藤太裕「Mathematical modelling to determine the greatest height of trees」2022年2月7日 引用)

植物の特徴を参考にしたもの作り

研究の目的は、植物の力学的な合理性を調べることで、もの作りに生かせるような知見を得ることだ。今回の研究によって、タワーなど細長い構造物の建設に役立つという。

今後の研究として金浜さんは、「今回は断面が密に詰まった樹木の最大高さを調べたが、竹のような中空円筒の植物や、幹に穴が開いた樹木がどのようなふるまいをするのか、また、幹の形が樹木の高さにどのように影響を与えるのかについて調べたい」と話す。

研究室としては植物の力学的な合理性全般について調べる予定で、木の振動実験などを行い、樹木が風の影響を軽減する仕組みの解明を目指す。茎の柔らかいフキが大きく生長する仕組みなどの研究を進めている。