尿管鏡手術のシミュレーショントレーニング、合併症リスクを低下 北大医学研究院の研究グループ、共同研究で明らかに
本学医学研究院・腎泌尿器外科学教室の研究グループは、尿管鏡手術の手術シミュレーショントレーニングの有効性について、医師のパフォーマンスが向上し合併症発生リスクの低減につながると明らかにした。英国キングスカレッジ・ロンドンが主導した共同研究に参加した。
尿管鏡手術は世界中で広く行われている術式であり、主に尿路結石の手術で使われる。今回の研究ではこの術式の経験が10例以下、かつシミュレーションの経験がない医師を集め、シミュレーションと従来のオンザジョブトレーニングとで手術パフォーマンスの差を調べた。シミュレーショントレーニングを受けた医師らは尿管鏡手術に必要な知識を座学で学んだあと、実際にトレーニングを受けた。
トレーニング終了からの25例とその後18カ月の間に実施された手術においてOSATSという手術技術評価指標で各群のスコアを比べたところ、シミュレーショントレーニングを受けた医師のスコアはより高く、患者の合併症・尿管損傷の数が低下したという。
研究グループの安部崇重(たかしげ)准教授は、現状では手術シミュレーションによる教育の実施については各医療機関に委ねられていることを指摘したうえで「(トレーニングを行うことで)合併症リスクが下がるという事実があるので、上級医や病院は必ずシミュレーショントレーニングを取り入れるべき」と話す。また「シミュレーショントレーニングは尿管鏡手術以外の術式の初期学習にも有効と考えられる」とも語った。
※オンザジョブトレーニング
職場で実務をさせることで行う職業教育のこと。以前は手術技術の指導において上級医の指導の下、研修医が実際に手術を執刀することで技術を学んでいた。