コロナ下の祭り 舞台裏の攻防を語る -北大祭・金葉祭実委対談【前編】
北大祭の開催断念や金葉祭のオンライン開催など、2020年の本学の「祭り」は新型コロナウイルス禍で大きな影響を受けた。運営の中心人物に当時の対応や今後の展望などを聞いた。
--昨年のイベントの開催判断の過程や検討事項について教えてください。
北大祭実行委員会実行委員長・小林俊介さん(理学部3年) 6月開催は4月の会議で断念が決まりました。その後、更なる延期は札幌市の気候的に難しく、秋開催の是非と実施形態(対面かオンラインか)を決める必要がありました。
企画の性質上、オンライン形式だと著しく魅力が損なわれると考えており、出来る限り対面形式で考えていました。
10月後半と11月初旬が延期開催日程の有力候補で、参加団体側の準備の都合上も2〜3か月前には開催可否を判断する必要があり、7・8月の会議に向けて、判断材料を増やしていきました。他の大学祭や大通公園のイベントの動向を調べ、開催日程の確保など大学側との交渉もしました。
他大学では秋に予定していたものをオンラインでやるところも多くありました。ただ、北大祭のオンライン開催のイメージがつかめず、あくまで参考でした。
金葉祭実行委員会昨年度代表・正村海登さん(理学部3年) 1回目の緊急事態宣言の前後から人を集めて開催することは難しいという話になり、7月頃にオンライン開催という結論に至りました。検討したことは、屋台や子供向けの実験教室など対面で行う企画の扱いでした。結果的にその2つはやらず、ライトアップのみオンラインでやることになりました。
京都大や大阪大など他大学のイベントや、オリンピックの2020年の開催可否を判断材料にしていました。オリンピックは、国がやっている一番大きなイベントで、北海道大学も国立大学なので同じ方針で動くだろうと考え注視していました。秋開催のさっぽろオータムフェストも参考にしました。
--一連の対応の中でどんな工夫や苦労がありましたか。
小林 採算が取れないと参加団体に出店のメリットがなく、赤字では申し訳ないので、3日間の開催日程の確保が秋開催を検討する上での至上命題でした。北大では各学部が個別に学事暦を作っており、全ての学部に交渉する必要があったのは難しい点でした。
決定プロセスでは北大生としての民主性を大事にする必要があると考え、北大生の代表としての自覚を持って、最新の情報を適宜開示しつつ学生一般の意見を仰ぐことを徹底しました。大学側との協議や会議はすべて公開でした。
ただし授業がオンラインだったので学生一般がどう思っているのかはほとんど分かりませんでした。
北大祭はキャンパス全域を使うので、入口がたくさんあるキャンパスの性質上、来場者数の制限方法の検討にも苦労しました。
正村 周知せずにライトアップをするにあたり、完全秘密裡で行う必要があり、情報の統制に気を遣いました。また動画の編集が初めてでしたので、編集担当のメンバーには頑張ってもらいました。音楽に合わせてライトアップを一斉に行うなどの工夫もしました。
情報統制の一方で動画を見てくれる方がいるか不安になり、地域の方々にぜひ見ていただきたいという思いを込めて、SNS等での情報発信を積極的に行いました。札幌市の広報誌の北区版に掲載していただき、2019年に企画でコラボする予定だったNHKにも取材していただきました。
金葉祭実行委員会はイベント実施にあたって他団体との関わりもほぼないため、決定は内部で行いました。
--委員会の内外からはどんな声が寄せられましたか。
小林 内部では「開催は難しいのでは」という意見が多かったです。開催日程の短さやノウハウ不足、模擬店の夜間の機材番が寒いのではないかなどが理由でした。
外部からは「やれたらいいね」というような意見も多く、オンラインでの意見募集では400人中300人くらいは「やりたい」、「やってもいいのではないか」という意見でした。中止の判断は仕方ない一方で、やりたい人にとっては申し訳ない苦渋の判断でした。
「学生の混乱を招く前に早く中止を決めろ」という意見や、「ギリギリまで判断を待つべき」という意見もありました。
対応決定後は断念のときよりかは延期のときの方が内外ともにマイナスの意見が多かった気がします。延期は判断を先送りしているだけなので、「中止にするなら早く中止にしろ」という感じですね。委員会内外ともにモチベーションの維持にも問題がありました。
開催断念時は心理的な負担というよりも諦めの気持ちが大きかったですね。「仕方ない」「来年に向けて頑張ろう」などの意見は内部から出ましたが、外部からは特段ありませんでした。
正村 金葉祭実行委員会では正式に意見募集はしていませんでしたが、知人などからは、「今年はやらないのか」、「去年やらなかったから今年だけは見たい」ということは結構言われていましたね。
一昨年も脅迫メールが来てイベントが中止になったことから、内外共に今年はライトアップやりたいねという意見が多く寄せられ、中止にするのではなくほかの方法を模索しオンライン開催に至りました。ライトアップに対する上級生のこだわりが強く、私たちの学年もまだライトアップを目にしたことがなかったので強く希望しました。
協賛していただいている地域の方々にやる気を見せたいという意見もありました。