コロナとともに 北大飲食店列伝① 「温かい居場所」存続へ模索 クレープなど新販売 ―自由人舎時館 北大店
新型コロナウイルスに立ち向かう北大周辺の飲食店を取材する新企画「コロナとともに 北大飲食店列伝」。第一回は1年生が通う高等教育推進機構の目と鼻と先のレストラン「自由人舎時館」だ。北大生や地域住民に愛された創業40年の老舗は、コロナ禍の今、「地域の温かい居場所」存続のため模索を続けている。
カフェタイムを開始
時館がコロナ前から計画し、昨年12月に始めたのが午後1時から午後6時までのカフェタイム営業だ。カフェタイムでは主にクレープとガレットを販売する。ガレットとは、そば粉の生地でおかずを包んだ軽食だ。
「生き残るには新店と同じ土俵へ立たないと、老舗は飽きられてしまう」。カフェタイムの発案者でマネジャーの照沼有香さんは語る。時館は元々カレーや大盛りメニューが売りの店だった。クレープとガレットを選んだのは、フランスで地域の憩いの場となっているクレープリーに倣ったためだ。
カフェタイムを設けることで午前から夜まで通しで営業できるようになった。狙いは「一日中居ても飽きない店作り」と照沼さん。食事やおやつを食べつつ、勉強やパソコン作業ができる居場所として活用してほしいという。店内にはWi-Fiも完備する。
クレープとガレットは東京のフランス料理店で作り方を学び材料も厳選するこだわりよう。新型コロナ対応などに追われ、予定より2カ月遅れで提供にこぎ着けた。照沼さんは「旬を採り入れた新作を考えていきたい」とも意気込む。
一番人気のクレープは「定番シュクレ」(税込700円)だ。記者が実食すると、生地の素朴な甘さと、コクのあるバター、すっきりしたアイス、濃厚な生クリームが引き立てあっていた。ガレットの一番人気は「鶏キーマ」(税込1050円)。時館で創業以来看板メニューの一つとして愛されてきたキーマカレーを使う。粗いそば粉を使った生地のパリパリした食感がアクセントになって、こだわりのカレーと上手く調和していた。クレープとガレット共に半径20㌢程度と大きい。クッキーなども付いてきて、ゆっくりと過ごしながら満足感が得られるメニューだと感じた。
コロナ禍の打撃受け対策も
新型コロナによる打撃について、運営会社のJCフーズの代表取締役で同店料理長の庄司徹さんは「売上はコロナ前の50%くらいに減った。学生メインのところは皆このくらいか、もっと悪いか」と苦境を明かす。例年は4月の新歓の時期が一番のかき入れ時だが、昨年は対面新歓が行われず「北大生が本当に来ない」状態で、売り上げは一時、例年比で7~8割減となった。
コロナ対策にも取り組んでいる。メニューやテーブルの消毒など衛生管理に気を配るほか、座席やテーブル同士の間隔を空け、一人席も用意する。依然として客足はコロナ前の水準には戻っていない。庄司さんは「借入金や助成もいつまでもある訳ではない。策を練るしかない」と覚悟を語った。
庄司さんにとって、時館はかつて夢中でバイトし、創業者から継いだ店。経営が苦しくても店の40年の歴史を思うと閉店は選び難かった。そのため、テイクアウトの宣伝や出前、店舗のスペースの貸し出しなど試行錯誤を続け収入を補ってきた。
コロナ禍を通し、庄司さんは人のつながりへの感謝の思いが強まったという。「利用していただけるだけでありがたい」と痛感し、「大変だったけど、色々勉強になった」と厳しい1年を振り返った。
〔店舗情報〕
自由人舎時館 北大店
札幌市北区北18条西7丁目
営業開始・ラストオーダー:月水木金 午前11~午後10時半(4月から)、土日祝 午前11~午後9時 (うちカフェタイムは定休日以外の午後1~午後6時)
定休日:火曜+カフェタイムのみ第一・第三月曜
電話番号:011-726-0158
ホームページ:http://www.jikan.co.jp/
※3月31日現在の情報です。
※感染対策を徹底した上で取材しています。