名和氏「調査委の聴取なかった」
北大「聴取なしで事実認定可能」 双方の見解を整理 —北大総長解任
名和氏は訴訟で本学側の解任申し出に至る手続きなどを問題としている一方、本学は解任直後の取材などで名和氏側の意見に対する認識を明らかにしている。訴状や本学への取材などをもとにこれまでの双方の見解を整理する。
調査委の聴取
本学によると、名和氏の非違行為について報告を受けた総長選考会議は2018年11月、弁護士3人の調査委員会を立ち上げた。名和氏は、この調査委による同氏への聴取が一切なく「公平性の担保のためには双方の聞き取りが不可欠」として違法だと主張している。
一方の本学は聴取していない事実は認めている。その上で、調査を進めるうちに「名和氏に確認するまでもなく、複数の関係者に対する面談調査、書面調査、関係資料により調査委としての事実認定が可能だと判断した」との認識を7月、北大新聞の取材に答えた。
意見陳述機会
本学によると、総長選考会議は19年5~6月、面談の形式で名和氏の意見陳述を2回実施した。しかし名和氏は、同会議が解任申し出の審議を行う事情を説明せず準備が十分できなかったほか、調査委がまとめた「調査報告書」に関する証拠資料を同氏が閲覧できないなど不当に制限されたなどと主張。このため実質的な反論や立証の機会が認められず「重大な手続き違反」だと指摘している。
一方、本学は証拠資料の閲覧について、「調査協力者の平穏などを考慮し、被害をさらに拡大することがないように一定の条件を約束する誓約書の提出を求めたところ、名和氏は拒んだ」と7月、北大新聞の取材に説明。その上で、代理人弁護士が誓約書を提出し閲覧したため「反論に必要な証拠は十分開示した」としている。
訴状によると、この条件には「本件関係者への直接の働きかけを将来にわたって一切行いません」などが含まれ、名和氏はこれをあまりに広範で不当だとして拒んだという。また、複写機などを使った資料のコピーを合理的理由なく制限され「極めて不当なものだった」とも批判している。
不適切な行為
総長解任に際して総長選考会議は30件、文部科学省は28件の名和氏の不適切な行為を認定した。本学によると、十数人が被害を受けたという。
これに対し、名和氏の弁護団は、そのすべてが「そもそも事実がないか、発言があったとしても文脈を読むとハラスメントには当たらない」と主張し、訴状では一件一件反論。具体的な内容について本学はプライバシーのため明らかにしていないが「証拠としては、複数の関係者が同一の証言をしていることや、録音データがあった」と7月の北大新聞の取材に回答した。