絶滅危惧種のアホウドリ、2種いると解明 尖閣諸島由来と伊豆諸島・鳥島由来 独自性を保つような保全を —北大・江田准教授ら
沖縄県・尖閣諸島と伊豆諸島・鳥島で主に繁殖する絶滅危惧種のアホウドリについて、尖閣由来と鳥島由来のアホウドリは別種だと本学総合博物館の江田真毅准教授らの研究グループが解明した。研究グループは、体重など形態的な調査を行い、これまで確認されてきた遺伝などの違いも踏まえ別種とするべきと結論。それぞれの独自性を保つように保全しないといけないとし、江田准教授は尖閣諸島での現地調査の重要性を訴えている。
江田准教授らと山階(やましな)鳥類研究所の研究グループが解明した。これまで尖閣と鳥島のアホウドリは遺伝や生態の違いがわかっていたが、体重など形態的な違いの調査が行われておらず、別種だとの結論は保留になっていた。一方、尖閣から鳥島へ渡ったアホウドリは少なくとも20羽確認されている。
そこで研究グループは2013~19年、鳥島にいた尖閣由来と鳥島由来の計24羽を捕獲して、体重やくちばしの長さ、太さなど計26カ所を計測・比較した。鳥島で生まれたアホウドリには足環が付けられており、DNAの解析も行ってどちらの由来か判別した。
その結果、鳥島由来のアホウドリのオスの方が尖閣由来のオスよりも24カ所で平均値が大きく、うち16カ所は統計的に有意な差があったことが分かった。一方、くちばしの長さについては尖閣由来のオスの方が、平均値が大きく、体の大きさに比べて長いくちばしをもつことも明らかになった。
これまでわかっていたこととして①約1000年前の遺跡から出土した骨のDNA解析からアホウドリには大きさなどが違う2つの遺伝的グループが存在。それぞれ現在の鳥島、尖閣由来のアホウドリの祖先と考えられる②尖閣の方がヒナの巣立ちが約2週間早い——などの遺伝的、生態的な違いがあったが、これらも踏まえ、別種とするべきと結論づけた。
江田准教授によると、アホウドリは一見同じ種に見えるが別種に分けられるべき「隠ぺい種」であり、個体数が少ない保全対象種から見つかるのは極めて珍しい。アホウドリは国の特別天然記念物にも指定されている。
尖閣諸島では2002年を最後に現地調査が行われていない。アホウドリには2種あるとわかったことで「別種として独自性を保つよう保全していくべき」という。そのためには「現地を見ないと始まらない。現地調査をして繁殖を妨げたり、促進したりする要因をみて、その上で保全政策を考えるべき」と江田准教授は訴える。希少種の保全の観点から「待っていたら大変なことになりかねない」と強調した。
また、尖閣諸島では13~14年の繁殖期に650羽がいたと推定されているものの、個体数も正確には把握できていないという。環境省は年内にも人工衛星画像を用いて尖閣諸島のアホウドリの生息状況などの調査をすることを検討している。
この研究成果は生物学の専門誌「Endangered Species Research」に19日、オンライン公開された。