【11月号】感染症の「先回り対策」目指す 北大に感染症国際研究所 センター改組、国際展開前面に —新型コロナ

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本学は2021年4月に「人獣共通感染症国際共同研究所」を設置する方針を決めた。本学北キャンパスにある人獣共通感染症リサーチセンターを改組して設置するが、「国際」と銘打ち、国際展開をさらに進めていく意気込みを示す。感染症はどこから広がるかわからないため、海外での研究が重要だ。新研究所は、新興感染症が流行する前に「先回り対策」をしていくことを目指す。

決定機動的に

本学では低温科学研究所などに続き、5カ所目の研究所。研究所は意思決定をする「教授会」を単独で組織でき、感染症対策に重要な、機動的で責任が明確な決定ができるようになる。  

同センターの鈴木定彦センター長は、新型コロナウイルスを例に挙げ「(感染症では)迅速に対応しないといけないことがたくさん出てくる」と話した。これまでは約半数が他部局所属の教員で構成された「協議員会」が同センターにあったが、日程調整が難しく重要事項の審議に時間がかかるなどの課題があった。

「国際疫学部門」など現在7つある部門を獣医学研究院の教員が兼務するものを含め約2倍の16に拡充。「国際展開推進部門」を設け、本学のアフリカのザンビア拠点に加えて、連携する国内大学の拠点がある中国やタイ、ベトナムでの共同研究も促進する。

鈴木センター長によると、同センターでは現在、32カ国と共同研究をし、60カ国と共著論文を書いている。研究所名に「国際」と銘打つことで「国際展開を前面に押し出し、さらに進める意気込みを入れた」と鈴木センター長は話す。

現在22人いる専任の教員も今後は増やしていきたい考えだ。

「先回り対策」

新型コロナウイルスを含め感染症は世界で広がっていく特徴がある。新研究所はセンターに引き続き、感染が流行する前に「先回り対策」をすることを目指す。具体的には①動物がウイルスなどを持っているのを特定し、人へのルートを遮断する②ウイルスなどの病原体をコウモリや家畜、野生動物などから集めて予めワクチンなどの予防策や診断法、治療法を開発する——というアプロ―チがある。

感染症発生の「ホットゾーン」は東南アジアやアフリカ、中南米など広範囲に存在する。そうしたゾーン内などの海外各地で研究することで新興感染症の芽を摘む狙いだ。鈴木センター長は「(これまで)アフリカやアジアなどで新しいウイルスを集めてきたが、研究所化でさらに拍車をかけたい」と意気込む。

コロナ研究も

新型コロナ研究では治療薬の開発などに取り組んでいる。今年度中にはウイルスなどを超微細に構造解析できる「クライオ電子顕微鏡」を生きたウイルスを扱える施設内に導入。これに対応する「病原体構造解析部門」を新たに設け、新型コロナ研究も進めていく。

本学は感染症研究に力を入れており、東京大、大阪大、長崎大と「感染症研究教育拠点連合」を形成。世界保健機関(WHO)からも同センターは「人獣共通感染症対策研究協力センター」に指定されている。