総長ポスト空席1年 責任者不在に学内から懸念 ―文科省も「好ましい状況ではない」
本学の名和豊春総長が休職して10日で1年がたち、総長の不在は節目を迎えた。名和総長は言動を理由として解任を申し出られているが、まだ解任の可否は決まっていない。前代未聞の事態に対し学内からは懸念の声が聞かれる一方、事態収拾の見通しは立たない。
事の発端は昨年秋。名和総長がパワーハラスメントをしたとの疑惑が持ち上がり、総長の選考などを行う総長選考会議が第三者からなる調査委員会を立ち上げて調査を始めた。名和総長は体調を崩し、同年12月10日付で休職。総長選考会議による審議の結果、「総長たるに適しない」と今年7月に解任の申し出を文部科学相に対し行い、最終的な解任の是非が委ねられた。
本学は総長が不在の中、笠原正典理事・副学長を総長職務代理に据え「大学運営に支障が出ないよう対応してきた」(広報課)という。文科省国立大学法人評価委員会の昨年度の業務評価結果でも、中期計画の達成に向けてはすべて「順調」と評価された。
一方で本学構成員からは懸念の声が上がっている。ある理系の教員は「外部に対する信頼という点で、責任者である総長の不在は会社に社長がいない状況のようなものだ」と指摘。「新規プロジェクトの資金獲得などに影響が出て発展のチャンスを逃している可能性がある」とみる。総長解任問題については「見通しがわからない不安がある」と話した。
別の教員は「学生などに迷惑をかけているから、ホームページで簡単にメッセージを発信しても良いのでは」と話していた。
最終的な解任判断に向けた文科省での審議に影響を及ぼす可能性があることを理由に本学は解任申し出について詳細の公表は現時点でも控えている。だが文科省での結論が出た後、「しかるべき時期に公表し、説明責任を果たす」(広報課)としている。
前例なき長期不在
文科省によると、1年に及ぶ総長不在は少なくとも2004年の国立大学法人化以降、例がない。この異例な状況に対し同省国立大学法人支援課の担当者は「国立大学法人法が想定する体制になっていないという点で好ましい状況ではない」と話す。
しかし、総長解任判断の見通しは不透明だ。文科相が解任しようとするときは、行政手続法上の聴聞の過程を経るが、名和総長側によると11月末時点で行われていないという。文科省の担当者は「人事の案件なのでお答えできない」とスケジュールなどについて明らかにしていない。
もっとも、解任の判断は難しそうだ。名和総長側は解任申し出に至るまでの過程を問題視し、調査委が総長に聞き取り調査を行わなかったなどと主張。一方で、本学は「規則に則り適正な手続きで結論を出した」とする。双方の主張が対立しており、解任には慎重な判断が求められる。
仮に解任された場合、総長選が行われるとみられる。前回の16年の総長選では公示から投票まで1カ月強を要しており、12月中旬には翌年4月の総長就任予定者が決まっていた。