「水曜どうでしょう」藤村氏、母校でメディアや組織を語る
本学公共政策大学院主催のトークイベント「藤村Dと語る 北海道どうでしょう?」が2日、本学総合博物館内で開催された。北海道テレビ放送(HTB)の人気番組「水曜どうでしょう」ディレクターで、現在は同局のエグゼクティブ・プロデューサーである藤村忠寿(ただひさ)氏(本学法学部卒業生)がゲストスピーカーとして登場。同氏は自身のこれまでの歩みを振り返るとともに、持ち前のユーモアを交えてメディアや組織に対する考えを語り、集まった学生や関係者らは次々と繰り出される「藤村節」に大いに盛り上がりを見せた。
「ローカル」のカテゴリーを超えたコンテンツ発信に期待
冒頭、藤村氏は自身が同局に入社した経緯やこれまで手がけてきた作品について振り返った。ローカル発のテレビ番組としては異例のヒットを記録したバラエティ番組「水曜どうでしょう」はインターネットの動画配信サービスでも人気を集め、近年では外国語版まで登場していると紹介。ノンシナリオ(台本のない)作品としては日本の作品の中で最も評価されているという。
同氏が監督を務め、今年3月に同局で放送されたドラマ「チャンネルはそのまま!」も同じくオンラインで配信され、「海外からのアタック(反響)の大きさは他のものと違っている」とコメント。「良質でさえあれば拾ってくれるシステム」だと動画配信サービスを評価し、ローカル番組の概念を取り払う可能性への期待を語った。
「コンプライアンス」で萎縮するテレビや社会への疑問
引き続いて同氏は、コンプライアンス(法令遵守)を徹底することでテレビや社会全体が萎縮している状況に異議を述べた。数十年前にテレビで見られた「くだらない」ことを発散する場が、今日ではユーチューブをはじめとしたインターネットに移っていると指摘。同氏はこのほか、昨今問題とされることの多いセクハラやパワハラなどを行う低俗な姿がいわば人間の「原始的な姿」だとし、ハラスメントを肯定する意図はなくとも、それらをあえて見せることにも教育上意義があるとの考えを示した。
自身の取り組みについては、「水曜どうでしょう」番組中での対応から謝罪会見に至った経験にも触れ、媒体にこだわらず「世間がどこまで許してくれるか?」に挑戦するコンテンツを作りたいと述べた。一方で今後の展望については、「今後にとらわれたらダメでしょう?」とも発言。長期的な計画を立てるのではなく、その時々で重要だと考えることに取り組んでいく姿勢も見せた。
自由を邪魔する勢力は会社や社員 それでも組織は変えられる
これから社会に出て行く学生に向け、同氏は「藤村流組織論」にも言及。「20代で(会社の)中枢になれるわけがない」と述べた上で、「20代の時は自分のこと、30代では家族のことだけを考えて(仕事を)やってきた。40代で仕事が面白くなってくる」と自らの職業観を語った。
組織の中で自由に仕事をすることについては、周囲の社員からの嫉妬を和らげるため自ら立候補して労働組合の委員長を務めた経験を紹介。「組織は変えられる」との考えが根底にはあったという。社員一人一人の話に否定することなく耳を傾けて信用を高め、社内には多様な問題が存在することを認識してもらうことで周囲からの理解を得たと振り返った。
トークセッション終了後には会場内の参加者との質疑応答も行われ、活発なやりとりで会場は終始和やかな雰囲気に包まれた。