様々な経験を活かし天気を伝える-気象予報士・斉田季実治さん【北大人に聞く 第3回】
「学校で学んだ事が今に活きている」。そう語るのは斉田季実治さん(43)。本学水産学部の卒業生で、NHKの夜のニュース番組「ニュースウオッチ9」の気象キャスターを務める。北大人に聞く第3回目では、そんな斉田さんにこれまでの経歴や本学での思い出を聞いた。
きっかけは「おしょろ丸」での航海
斉田さんは1975年生まれ。本学入学以前は林野庁に勤める父親の転勤で、4都府県の学校に通った。本学水産学部には、航海実習に興味があった事や沖縄などと並び住んだことの無い地方であった事などから進学を決めた。
入学後は札幌で教養教育を受けた後、函館の水産学部・水産海洋科学科(当時)で物理学を専攻した。ホタテ養殖等に役立てるために内浦湾の海水温変動などを研究していたという。そんな同学部での学びの中、練習船「おしょろ丸」での2週間にわたる実習で航海が天候に左右されることを実感。気象予報士試験への挑戦を決めた。1回目の受験では不合格だったが、合格への道筋をつかみ2回目で合格。3年生3月の事だった。当時、気象予報士の数は現在の3分の1ほどで、函館では初だった模様。合格は周りの学生にも刺激を与え、気象業界で現在活躍している同級生もいるという。
本学では課外活動にも励んだ。高校から始めたラグビーの2団体に所属したほか、海やスキー、温泉などを満喫。道内各地を車で巡り、在学中の4年間でメーターは地球1周分に相当する4万キロを超えた。
卒業後は様々な経験
学部卒業後は気象予報士の資格を活かしたいと北海道文化放送(UHB)に就職。事業部を経て取材記者として災害やスポーツ、裁判など幅広く取材した。そうした中、入社3年目に転機が訪れた。医療裁判ドキュメンタリーの製作に携わった際、かねてから持っていた医者の夢が再燃。医学部再受験を見据え、UHBを退職した。しかし、2回の受験に失敗し、金銭面などから再受験を断念することに。そして再び気象予報士の資格を活せる民間の気象会社に転職。電力会社や道路管理者等への業務用の気象予測などを務めた。2年目の秋にはNHK熊本で初めて気象キャスターとして出演。3年半務めた後、東京の気象キャスターオーディションに合格し、現在に至る。
防災に強い気象キャスターを目指して
現在の仕事では防災に力を入れて活動している。技術進歩などにより、気象情報へのアクセス手段や情報そのものの量が増える中、斉田さんは、「定期的に視聴してもらう事や天気に興味を持ってもらう事が防災に繋がる」と力説する。テレビの役割を認識し、小道具を用いて伝えるなどずっと見続けてもらうための工夫をしているという。また、「気象予測は長年の経験のある方のほうが優れる。予測だけでなく経験を掛け合わせて防災に強い気象キャスターを目指している」と斉田さん。報道記者として実際の災害現場を見た経験や全国各地に住み気候特性を体感的に把握している事が役立っているという。
学生へ「様々な経験を」
最後に斉田さんに学生へのメッセージを聞いた。「学校で学んだ事が今に活きている。得意なものに何かを掛け合わせて新しいことが出来る事もある。そういった考えを持って様々な経験をしてほしい」とエールを送った。
<斉田季実治さん プロフィール>
1975年生まれ。本学水産学部在学中に気象予報士資格を取得。卒業後、北海道文化放送(UHB)での記者時代を経て気象キャスターに。2016年からNHK「ニュースウオッチ9」を担当。8都道府県に住んだ経験などを活かし天気を伝える。著書に「いのちを守る気象情報」(NHK出版新書)、「知識ゼロからの異常気象入門」(幻冬舎)があるほか、全国各地で講演。