【解説】麻疹の感染拡大 終息へ向かうか ワクチン接種が鍵

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今年3月に沖縄県で感染が確認されてから、麻疹(はしか)の感染拡大が騒がれている。国立感染症研究所によると、今年に入ってから5月23日までに162名の感染が報告された。本紙は今回の流行と今後の展開、今我々が注意すべきことについて北海道大学病院感染制御部部長の石黒信久先生に話を聞いた。

そもそも麻疹とは何か。麻疹とは麻疹ウイルスによる感染症であり、咳や発熱などの風邪に似た症状を示す。しかし、重症化することがあるので風邪とは別の疾患と考えたほうが良い。空気感染することが知られており、伝播力が強く広がりやすい。例えば、ある室内に麻疹の患者が居た場合、その部屋中にウイルスが蔓延するほどだという。

日本においては2008年の大規模流行以降大きな流行は見られていない。国の政策でワクチン接種を含めた様々な啓発活動が行われており、2015年にはWHO(世界保健機関)から「排除状態」(※1)の認定を受けた。

流行の原因と今後の展開は

今回日本で起こった麻疹の感染拡大は、台湾からの旅行者がウイルスを持ち込んだために発生したとされる。沖縄県から感染が広がり、現在は国内各所で感染が確認されている。国内で感染が広がった原因について石黒先生は、「麻疹にはおおよそ2週間の潜伏期(※2)があり、その間に患者が移動するため。具体的には、沖縄県に旅行に行った人が県内で感染し、(症状が出ないうちに)地元に帰ることでウイルスが全国に広がったと考えられる」と説明する。

これからの展開について石黒先生に尋ねたところ、今回の流行は終息する見込みだという。「ワクチン接種が推進されてきたことにより日本国民のほとんどは麻疹の抗体を持っている。但し、約5%の人は抗体を持っておらず感染・発症する。その場合でも保健所が患者の追跡・囲い込みなどの対策を取るのでじきに流行は終息するだろう」と予測する。

ワクチン接種や早期検査を

今後、万が一に備えてどのような注意を払うべきか。肝心なのはワクチンを接種して抗体を獲得することだ。「麻疹は空気感染で伝播するために、マスクにより感染を防ぐのは難しい。2回のワクチン接種を済ませていない人は病院でワクチンを打つことが有効な手段だ」という。また、今回の流行に限らず、麻疹の流行が確認されている地域に行く場合は事前にワクチン接種を済ませておくことが望ましい。海外旅行などの際には渡航先の情報を十分に確認し、対策を講じることが自分を守ることに繋がる。

もし自分や身の周りの人に麻疹の疑いがある場合は、まず病院に行き診察を受けることが推奨される。先述の通り、麻疹の症状は風邪とよく似ており区別が難しい。麻疹特有の症状として「コプリック斑」(※3)があるが素人目には判断がつきにくい。そのため、咳や発熱などの症状がある場合には病院で診察を受けることが大切だ。周囲への拡大を防ぐためにも、早期発見が重要である。

(※1)国内に由来する麻疹ウイルスが存在せず、36カ月以上流行性の麻疹ウイルス感染が阻止されていること。

(※2)感染から症状が表れるまでの期間。

(※3)頬の裏側に発生する小さな白い斑点。麻疹に特有の症状とされる。

表1 国内はしか報告数(5/23時点) 国立感染症研究所HPより
コプリック斑(国立感染症研究所HPより)

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